ノース人によるアメリカ大陸の植民地化

10世紀頃、ノース人（ノルマン人、ヴァイキング）は北大西洋地域を探検し、北アメリカ大陸北東部へ進出しました。彼らはグリーンランドに約500年間定住しましたが、北アメリカ大陸の開拓地は小規模で、恒久的なものには発展しませんでした。

グリーンランド

アイスランドのサガによれば、980年代にアイスランドからのノース人がグリーンランドを開拓しました。赤毛のエイリークは、追放中にグリーンランドの南西海岸を探検し、入植を企てました。彼は、人々を惹きつけるために、この地を「グリーンランド」と名付けました。そして、エイリークは自らの名を冠したエイリークスフィヨルドの奥地に領地を建設し、追随者たちに土地を分け与えました。

最盛期には東西2つの入植地があり、人口は3,000～5,000人、少なくとも400の農園が存在しました。ノース人はガルダルに司教館を置き、セイウチの牙、毛皮、ロープ、羊、鯨やアザラシの脂身、ホッキョクグマ、牛皮革などを輸出していました。1261年にはノルウェー国王の支配下に入りましたが、独自の法を持ち続けました。

14世紀に入ると入植地は衰退し始めました。西入植地は1350年頃に放棄され、1378年にはガルダルの司祭もいなくなりました。1408年の婚姻記録を最後に、入植者に関する記録は途絶えました。東入植地は15世紀後半には消滅したと考えられています。衰退の原因としては、小氷期による航海の困難化、農業の不振、アフリカ象牙との競争などが挙げられます。ノルウェー＝デンマーク王室はグリーンランドを領有地と考え続けましたが、1721年にハンス・エーゲデ率いる遠征隊が派遣されるまで、ヨーロッパ人との接触はありませんでした。遠征隊は生存者を発見できませんでしたが、デンマークの領有権主張の契機となりました。

ヴィンランドとランス・オ・メドー

アイスランドのサガによると、ノース人はグリーンランド入植後まもなく、西方の土地を探検し始めました。985年、ビャルニ・ヘルヨルフソンは航海中に嵐に遭い、西の土地を目撃しました。レイフ・エリクソンはビャルニの報告を受け、その地を探検し、15年後には小さな開拓地を築きました。

サガには、ヘッルランド（平らな石の土地）、マルクランド（森の土地）、ヴィンランド（ワインの土地）の3つの地域が記されています。マルクランドは木材が不足していたグリーンランドの入植者にとって重要でした。ヴィンランドについては、「ワイン」がワイン（wine）ではなく、牧草地（meadow）を意味するという説も有力です。

エイリークの子供たち、レイフ、ソルヴァルド、ソルステイン、フレイディースは皆、北アメリカ大陸を訪れました。ソルヴァルドは現地で命を落としました。

レイフの冬季宿営

レイフはビャルニの航路を参考に、35人の乗組員と共に新世界へ向かいました。ヘッルランドを「平坦で森があり、白い浜が広がる土地」と表現しました。1001年、レイフはおそらくニューファンドランド島北端のケープ・ボールド付近で冬を過ごしました。そこで、育ての親であるドイツ人のティルカーが、自生するベリー（ワインベリー、スカッシュベリー、グーズベリー、クランベリーなど）を見つけ、酩酊しました。レイフが発酵したベリーをワインと表現したかは定かではありません。ヴィンランドの「ヴィン」が、ワイン（長音）ではなく牧草地（短音）を意味するという説もあります。

レイフは「レイフスボダルナ」で冬を過ごし、グリーンランドへ帰還しました。

ソルヴァルドの航海

1004年、レイフの弟ソルヴァルドは30人の乗組員と共にニューファンドランドへ向かい、レイフの宿営地で冬を過ごしました。春になると、ソルヴァルドは先住民（スクレリング）を襲撃しましたが、反撃を受け命を落としました。その後、ノース人はもう一冬を過ごし、翌春にそこを離れました。

カルルセフニの遠征

1009年、ソルフィン・カルルセフニは家畜と160人の男女を率いてヴィンランドへ向かいました。厳しい冬の後、南へ向かい「ストラウムフィヨルド」に上陸しましたが、「ストラウムセイ」へ移動しました。ここでは先住民とノース人の間で交易が行われました。しかしその後、牛が先住民を驚かせたことがきっかけで争いが起こり、ノース人は撤退を余儀なくされました。

恒久的植民地の不成立

北アメリカ大陸の開拓地は、毛皮や木材など、グリーンランドにはない資源の利用を目的としていました。しかし、先住民との対立などから、恒久的な植民地には発展しませんでした。それでも、飼料や木材、先住民との交易を求めて、マルクランドへの航海は400年間続けられました。

ノルウェー国王オーラヴ3世の貨幣（メイン・ペニー）が、アメリカ合衆国メイン州の先住民遺跡から発見されたことは、11世紀以降もノース人と先住民の交流があったことを示唆しています。1347年のアイスランド年代記には、木材を積んだグリーンランドの船がマルクランドからアイスランドへ向かったことが記されています。また、イヌイットの集落からノース人の遺物が出土しています。

その後の展開

クリストファー・コロンブスによるアメリカ大陸到達後、ノース人の北アメリカ航海は長らく不明確なままでした。1837年、デンマーク人古物商カール・クリスチャン・ラフンがノース人の北アメリカ開拓の可能性を指摘し、サガが再評価されました。

ブレーメンのアダムは1075年頃、北アメリカを「ヴィンランド」として初めて言及しました。13世紀から14世紀にかけて、アイスランドのサガが書物として成立しました。

1960年代、考古学者のアン・スタイン・イングスタッドとその夫ヘルゲ・イングスタッドは、ニューファンドランド島のランス・オー・メドーでノース人の開拓地を発掘し、ノース人のアメリカ大陸到達を決定づけました。ヘッルランドは現在のバフィン島、マルクランドはラブラドール地方に比定されていますが、ヴィンランドの位置については議論が続いています。ランス・オー・メドーがヴィンランドの開拓地であるとする説が有力ですが、より温暖な南方に位置すると主張する研究者もいます。

ルーン文字が刻まれた石碑（ケンジントン・ルーンストーンなど）が北アメリカで発見されていますが、偽造である可能性も指摘されています。ヴィランドマップやスカールホルトマップといった地図も、ノース人の探検との関連が議論されています。

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