ノーマン・シュワルツコフ

H・ノーマン・シュワルツコフJr.：湾岸戦争を勝利に導いた名将

H・ノーマン・シュワルツコフJr.（1934年8月22日 - 2012年12月27日）は、アメリカ合衆国陸軍の四つ星大将であり、湾岸戦争におけるアメリカ中央軍司令官として知られています。その卓越した軍事戦略とリーダーシップは、歴史に名を残す偉業として称えられています。

知的才能と華麗なる経歴

シュワルツコフは、ニュージャージー州トレントンで生まれました。彼の父ハーバート・ノーマン・シュワルツコフ少将もアメリカ陸軍軍人で、イラン政府の軍事顧問を務めた経験を持つ人物でした。シュワルツコフ自身、12歳の時にイランで暮らした経験から中東文化への造詣を深め、流暢なドイツ語、フランス語、ペルシャ語を話すなど、高い多言語能力も併せ持っていました。その知性の高さは、IQ168という数値からも窺い知ることができ、高IQ者団体メンサの会員でもありました。

ヴァリー・フォージ・ミリタリー・アカデミーを経て、1956年にアメリカ陸軍士官学校を卒業。さらに、南カリフォルニア大学で誘導ミサイルに関する論文で修士号を取得しました。学生時代にはアメリカンフットボール、レスリング、合唱と多彩な活動に励み、ウェストポイント士官候補生礼拝堂聖歌隊の指揮者も務めるなど、多様な才能を開花させていました。

卒業後はアメリカ陸軍歩兵学校で空挺降下の資格を取得し、空挺師団の将校としてアメリカとドイツに駐留。ベトナム戦争では南ベトナム陸軍の空挺部隊の軍事顧問として従軍し、戦闘で2度の負傷を経験しています。その功績から、パープルハート章を受章しました。

湾岸戦争と「砂漠の嵐」作戦

1988年に大将に昇進すると、シュワルツコフはアメリカ中央軍司令官に任命され、NATO軍参謀も務めました。そして、1990年に勃発した湾岸戦争では、アメリカ中央軍司令官として「砂漠の嵐」作戦を指揮しました。

シュワルツコフの卓越した戦略眼は、この作戦で特に際立ちました。イラク軍の集中していたクウェート側を避けてイラク領内を攻撃するという大胆な「左フック」戦略は、わずか4日で地上戦を勝利に導くという驚異的な成果をもたらしました。

彼は前線で指揮を執るだけでなく、自らプレス発表を行い、マスコミから「嵐のノーマン」と呼ばれるほど、世間の注目を集めました。そのカリスマ性と決断力は、多国籍軍を率いての作戦遂行に大きく貢献したと言えるでしょう。

退役とその後

湾岸戦争後、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領から陸軍元帥への昇進と陸軍参謀総長への就任を打診されましたが、シュワルツコフはこれを固辞し、1991年8月に退役しました。退官式では、当時のチェイニー国防長官から、彼の功績を称える感動的なスピーチが送られました。

退役後はフロリダ州タンパで余生を過ごし、2012年12月27日、肺炎による合併症のため78歳で亡くなりました。

受賞歴

シュワルツコフは、その輝かしい軍歴において数々の栄典を受賞しました。主なものとしては、レジオン・オブ・メリット、シルバースター、ディフェンス・スーピアリアサービスメダル、パープルハート章などの軍功章に加え、大統領自由勲章、議会名誉黄金勲章、バス勲章ナイト・コマンダー（イギリス）、レジオンドヌール勲章グラントフィシエ（フランス）などがあります。

まとめ

H・ノーマン・シュワルツコフJr.は、卓越した軍事戦略、高い知性、そしてカリスマ性あふれるリーダーシップによって、湾岸戦争における勝利に大きく貢献した人物です。彼の功績は、現代の軍事史においても重要な位置を占め、後世に語り継がれるべきものと言えるでしょう。彼の生涯は、まさに「伝説の将軍」と呼ぶにふさわしいものでした。

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