バラ・チェルビ

バラ・チェルビ

バラ・チェルビ（生年不詳 - 没年不詳）は、13世紀初頭にチンギス・カンに仕えたモンゴルの武将です。ジャライル部出身で、千人隊長を務めました。同名の人物との混同を避けるため、『元朝秘史』では「チェルビ」（侍従の意）という官職名をつけて区別されています。他の史料では、「バラ・ノヤン」とも記されています。

生涯

『元朝秘史』によると、バラ・チェルビは、兄のアルカイ・カサルとともに、父のセチェ・ドモクに連れられて、ジャムカから離反しテムジン（後のチンギス・カン）の陣営に帰参したとされています。同時期には、クビライ、スブタイ、ブトゥ・キュレゲンなどがテムジンの陣営に参加し、後に活躍しました。

バラ・チェルビがチンギス・カンのモンゴル高原統一にどのように貢献したかは明確ではありません。しかし、1206年にチンギス・カンが即位すると、彼は右翼の千人隊長に任命されました。兄のアルカイ・カサルは、この時ケシク（親衛隊）の長に任命されています。アルカイ・カサルは、チンギス・カンの死後、バラ・チェルビと同じく右翼の千人隊長に任命されています。

ホラズム・シャー朝征服とインド侵攻

1219年、チンギス・カンは中央アジア遠征（ホラズム・シャー朝征服）を開始し、バラ・チェルビも千人隊長の一人として参加しました。モンゴル軍はホラズムの主要都市を攻略し、短期間で中央アジアを征服しました。しかし、ホラズム・シャー朝のアラーウッディーン・ムハンマドとジャラールッディーン・メングベルディーは、イラン・アフガニスタン方面へ逃れていきました。

特にジャラールッディーンはモンゴル軍に抵抗し、シギ・クトク率いるモンゴル軍を破るという功績を挙げました（パルワーンの戦い）。そのため、モンゴル軍はジャラールッディーンを追撃し、インダス河まで追い詰めました。

インダス河畔の戦いで、モンゴル軍はジャラールッディーン率いる軍を破りましたが、ジャラールッディーンはインダス河を渡って逃亡しました。チンギス・カンは、バラ・チェルビとドルベイ・ドクシンを派遣し、ジャラールッディーンを追撃させました。バラ・チェルビとドルベイ・ドクシンは、インダス河を渡りヒンドゥスタン（インド）でジャラールッディーンを追撃しましたが、捕捉できませんでした。結局、ヒンドゥスタンの一部を略奪して帰還しました。

その後

チンギス・カンの死後、バラ・チェルビはチンギス・カンの息子であるトゥルイに仕えました。しかし、その後の動向や死亡時期は不明です。『集史』によると、クビライ・カアンの時代には、バラ・チェルビの息子マクイが父の地位を継いだとのことです。

ジャライル部セチェ・ドモク家

セチェ・ドモク…バラ・チェルビの父
アルカイ・カサル…バラ・チェルビの兄
バラ・チェルビ
マクイ…バラ・チェルビの息子

参考文献

志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年
杉山正明『モンゴル帝国と大元ウルス』京都大学学術出版会、2004年
村上正二訳注『モンゴル秘史 1巻』平凡社、1970年
村上正二訳注『モンゴル秘史 2巻』平凡社、1972年
村上正二訳注『モンゴル秘史 3巻』平凡社、1976年
『新元史』巻128列伝25「八剌扯児必伝」

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