ハリオス

ギリシア神話の世界には、「ハリオス」という名を冠する人物が複数登場し、それぞれ異なる物語や系譜に結びついています。これらの人物はしばしば混同されることがありますが、出典となる叙事詩や伝承によって、その来歴や運命が区別されています。

一人目のハリオスは、壮麗な都市リュキアの指導者サルペードーンに仕えた勇敢な戦士としてその名が残っています。トロイア戦争という大いなる戦乱の時代、彼はサルペードーン率いるリュキア軍の一員としてトロイアの味方となり、奮戦しました。しかし、苛烈な戦いの中で、策略家として知られるギリシア側の英雄オデュッセウスとの遭遇が彼の運命を決定づけます。激しい攻防の末、ハリオスは惜しくもオデュッセウスの手によって命を落としました。この戦いでは、彼とともにコイラノス、アラストール、クロミオス、アルカンドロス、ノエーモン、プリュタニスといったリュキアの他の勇士たちもまた、オデュッセウスによって討たれたと伝えられています。

二人目のハリオスは、神秘的なスケリア島を支配していたパイアーケス人の王アルキノオスと、その妃アーレーテーの間の子息です。このハリオスは、兄であるラーオダマース、そして姉妹のクリュトネーオスや名高いナウシカアーと共に、王家の子供たちの一人として育ちました。パイアーケス人は優れた航海術で知られていましたが、芸術、特に舞踏においても秀でていました。ハリオスと兄ラーオダマースは、その中でも特に傑出した踊りの名手として讃えられていました。彼らのために、名工ポリュボスは特別な技巧を凝らした毬を制作し、二人はこの毬を用いた見事な舞を客人の前で披露しました。その客人こそ、長い放浪の末にスケリア島に漂着したオデュッセウスでした。ハリオスとラーオダマースの息の合った、そして驚くべき技量を示す舞踏は、苦難を乗り越えてきたオデュッセウスを深く感嘆させたと言われています。

三人目のハリオスは、トロイアの主要な指揮官であり、後にローマの建国神話へと繋がる英雄アイネイアースの部下として登場します。トロイア戦争が終結し、故郷が灰燼に帰した後、アイネイアースは新たな土地を求めて部下や家族と共にイタリアへと旅立ちました。ハリオスもまた、この困難な漂泊の旅にアイネイアースに従い、未知の土地での新たな生活を目指しました。しかし、イタリアの地で彼らを待ち受けていたのは、この地の有力者トゥルヌス率いるラティウム人との激しい戦いでした。新しい故郷を巡るこの争いの中で、ハリオスは勇ましく戦いましたが、無情にも敵将トゥルヌスの手に斃れることになります。彼は、パレリス、ギューゲス、ハリュス、ペーゲウス、アルカンドロス、ノエーモン、プリュタニス、リュンケウス、アミュコス、クリュティオス、クレーテウスといった多くの仲間たちと共に、この戦いで命を落としました。

これら主要な人物以外にも、ペーネロペーの多くの求婚者の一人としてもハリオスという名の人物が見られます。彼はイタケー島の王オデュッセウスの妻ペーネロペーに言い寄り、彼女の財産を浪費した無遠慮な男たちの集団に属していました。ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』によれば、このハリオスはザキュントス島の出身であったとされています。

このように、「ハリオス」という名前は、ギリシア神話の様々な場面、特に英雄伝説や叙事詩の中で複数の人物に用いられており、それぞれの物語において異なる役割と運命を担っています。これらの異なるハリオスたちは、それぞれの文脈において区別して理解する必要があります。

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