バリー・シール

バリー・シール：麻薬密輸人からDEA情報提供者、そして暗殺

アドラー・ベリマン・"バリー"・シール（Adler Berriman "Barry" Seal、1939年7月16日 - 1986年2月19日）は、アメリカの航空会社トランス・ワールド航空（TWA）のパイロットであったが、後にメデジン・カルテルの主要な麻薬密輸業者となった人物である。

生い立ちとTWAでのキャリア

ルイジアナ州バトンルージュで生まれたシールは、幼い頃から飛行機に魅了され、16歳で学生パイロット、17歳で自家用パイロットの資格を取得。彼の才能は早くから認められ、飛行教官からは天性の素質を持つと評された。1962年にはルイジアナ州陸軍州兵に入隊。1964年、TWAに入社し、フライト・エンジニアから副操縦士、そしてボーイング707の機長へと昇進し、西ヨーロッパの定期路線に乗務した。

しかし、1972年7月、DC-4を使ってメキシコへプラスチック爆薬を密輸しようとした陰謀に関与したとして逮捕され、TWAでのキャリアは終わりを迎える。この事件は1974年に検察の不正行為により最終的に棄却されたが、TWAはそれまでに、この計画に参加するために虚偽の病気休暇を取得していたシールを解雇していた。

麻薬密輸の世界へ

1976年初頭、シールは少量のマリファナの空輸から麻薬密輸の世界に足を踏み入れた。1978年までには、彼の密輸事業は拡大し、マリファナよりもはるかに収益性の高いコカインの空輸を始めた。エクアドルへの麻薬密輸旅行の帰路、ホンジュラスで逮捕され収監されたことは、彼にとって重要な転機となった。ホンジュラスでの服役中、彼は後にシールの密輸事業で重要な役割を果たすことになるエミール・キャンプや、現地の密輸業者エリス・マッケンジーと出会い、人脈を築いた。

密輸能力を拡大するため、シールは元義理の兄弟であるウィリアム・ボトムズをパイロットとして雇い、1980年以降、ボトムズはシールの密輸事業のメインパイロットとなり、シールが計画と作戦を監督した。

1981年、シールはメデジン・カルテルのためにコカインの密輸を開始。最盛期には、コロンビアからアメリカへのコカイン輸送で1フライトあたり50万ドルもの収入を得ていた。彼の密輸方法は、低空飛行の飛行機を使い、ルイジアナ州の遠隔地に麻薬の小包を空中投下するというもので、その後、シールの地上チームが回収し、フロリダにあるコロンビアの販売代理店に輸送していた。1982年までに、彼は12機以上の航空機を密輸に使用していたが、その規模の大きさから、すぐにルイジアナ州警察と連邦捜査官の注目を集めることになった。

DEAとの協力、そして暗殺

フロリダの麻薬取締局（DEA）は1981年までにシールの密輸活動を把握し、1983年3月には2つの起訴状が提出された。重い量刑に直面したシールは、当時のジョージ・ブッシュ副大統領のオフィスに連絡を取り、DEAの情報提供者となることを決意。ニカラグアでの任務後、1985年6月に連邦政府に拘束され、数ヶ月間法廷で証言し、麻薬密輸業者としての経験を語った。彼の証言は、多くの麻薬関連裁判で有罪判決をもたらした。

しかし、DEAへの協力は、彼の命を危険にさらすことになった。1986年2月19日、シールは保護観察期間中、バトンルージュの救世軍センターの前で、メデジン・カルテルに雇われた殺し屋によって射殺された。6人のコロンビア人が逮捕され、殺人罪で起訴された。

シールの暗殺は、麻薬戦争の暗部を浮き彫りにした。彼は、麻薬密輸の世界で巨万の富を築きながらも、最終的にはその世界に命を奪われた。バリー・シールの波乱万丈な生涯は、映画『バリー・シール/アメリカをはめた男|バリー・シール_アメリカをはめた男』として映画化されている。

関連項目

コントラ
サンディニスタ民族解放戦線
ナルコス
潜入者

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