パダン・ブサール駅

パダン・ブサール駅：マレーシアとタイを結ぶ鉄道の要衝

パダン・ブサール駅は、マレーシアのプルリス州パダン・ブサールに位置する、マレー鉄道の駅です。この駅は、単なる地方の駅以上の重要な役割を担っています。それは、マレーシアとタイの国境を越える鉄道輸送の要衝としての役割です。駅は国境線から約300mマレーシア側に位置していますが、ここが両国間の出入国手続きを行う唯一の場所となっています。

国境を越える駅

駅舎内には、マレーシアとタイの両方の出入国審査場が設けられており、出国審査を終えた旅行者は同じ建物内で入国審査を受けることができます。かつては、この駅を経由する国際列車が運行されており、乗客の出入国手続きが完了するまで列車は待機していました。その間、機関車の交換や車両検査も行われていました。現在では、定期旅客列車は当駅を始発または終着としており、国際列車は運行されていません。しかし、マレーシアとタイを結ぶ国際貨物列車は、全てこの駅を経由しています。

新駅舎と近年の変化

2013年1月には、マレーシア側の複線化と電化工事の完了に伴い、新駅舎が完成しました。新駅舎では、改札と両国の発券売り場が2階に移設され、マレーシアからタイの列車に乗り換える際には、1階で出入国手続きが必要となりました。現在、当駅には、マレーシア側のコミューターとETS（長距離電車）が乗り入れています。また、タイ側からは、バンコクとパダン・ブサールを結ぶ寝台特急と、ハートヤイとを結ぶ短距離列車が乗り入れています。

タイ側のパダン・ブサール駅

興味深いことに、タイ領内にも同名の「パダン・ブサール駅」が存在します。しかし、こちらは小規模な駅で出入国管理機能は持っておらず、国境を越えるすべての手続きはマレーシア側のパダン・ブサール駅で行われます。

歴史

パダン・ブサール駅の歴史は、1918年3月1日にマレー鉄道ケダ線が延伸した際に、その終点として開業したことに始まります。わずか数ヶ月後、タイ側の線路が接続され、国境駅となりました。この西海岸ルートが、東海岸ルートよりも先にタイとの接続を完了しました。

駅の構造

駅は、単式と島式の複合型ホーム2面3線を有する地上駅です。駅舎はホームに面しており、プラットホームはマレー鉄道規格の高床式です。タイの車両に乗降する際には、出入口のステップを乗り越える必要があります。南東側には貨物駅が併設されています。ホームに面して、タイとマレーシアの出入国審査場とタイ国鉄のオフィスがあります。

駅周辺

駅舎側にはロータリーがあるだけで、特に目立った施設はありませんが、駅の裏側にはパダン・ブサールの市街地が広がっています。ケンタッキーフライドチキンが駅の近くにあります。

運行系統

マレー鉄道

KTM ETS: パダン・ブサール駅 - アラウ駅
KTMコミューター バターワース-パダン・ブサール線: パダン・ブサール駅 - ブキッ・クトリ駅

タイ国鉄

南本線: パダン・ブサール駅 (タイ) - パダン・ブサール駅

過去の国際列車

かつて運行されていた国際列車には、以下のものがありました。

タイ方面行き

バターワース駅 - フワランポーン駅（バンコク）: 第36寝台特急列車（タイ車両使用）
KLセントラル駅 - ハートヤイ駅: 第20寝台特急列車（マレーシア車両使用）

マレーシア方面行き

クルンテープ駅（バンコク） - バターワース駅: 第35寝台特急列車（タイ車両使用）
ハートヤイ駅 - KLセントラル駅: 第21寝台特急列車（マレーシア車両使用）

まとめ

パダン・ブサール駅は、マレーシアとタイの国境を越える旅行者にとって重要な役割を果たしています。駅は、両国間の鉄道輸送だけでなく、出入国手続きの中心地としての役割も担っており、その歴史、構造、そして両国を結ぶ要衝としての重要性は、鉄道ファンだけでなく、多くの旅行者にとっても興味深いものです。

参考文献

岡本和之　『タイ鉄道旅行』　（めこん、1993年）ISBN 4-8396-0080-5
杉本聖一　『魅惑のタイ鉄道』　（玉川新聞社、2000年）ISBN 4-924882-29-1
柿崎一郎　『王国の鉄路 タイ鉄道の歴史』　（京都大学学術出版会、2010年）ISBN 978-4-87698-848-8

関連項目

マレーシアの鉄道駅一覧
マレーシア＝タイ国境

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