パラティーノ

パラティーノの丘：ローマ建国神話と皇帝たちの宮殿



パラティーノの丘（ラテン語: Mons Palatinus、イタリア語: Palatino）は、ローマの七丘の中で最も歴史が古いとされる場所です。フォルム・ロマヌムとキルクス・マクシムス（大競技場）の間に位置し、古代ローマの重要な歴史的出来事の舞台となってきました。

建国神話と狼の洞窟



ローマ神話によれば、この丘はローマ建国の英雄ロムルスとレムスが狼に育てられた場所とされています。軍神マルスとレア・シルウィアの間に生まれた双子の兄弟は、叔父によってテヴェレ川に捨てられましたが、狼に拾われてこの丘の洞窟（ルペルカル）で育てられました。その後、彼らは豚飼いのファウストゥルスとその妻に保護され、成長して祖父の復讐を遂げ、最終的にパラティーノの丘にローマを建国したと伝えられています。兄弟は都市建設を巡って対立し、ロムルスがレムスを殺害するという悲劇もこの丘で起こりました。ロムルスは紀元前753年4月12日にローマを建国し、パラティーノに多くの人を住まわせたと言われています。

この地は、ヘラクレスがゲーリュオーンの牛を連れてギリシアへ帰る途中に訪れた場所でもあり、ヘラクレスが牛を盗んだカークスを倒したという伝説も残っています。

歴史：貴族の邸宅から皇帝の宮殿へ



紀元前1000年頃には、すでに人が居住していた痕跡が発掘されています。ローマ建国以前には、サビニ人やアルバ人が移住してきた際に、もともと住んでいたローマ人がパラティーノに移り住んだとされます。共和政ローマ期には、貴族や裕福な人々がこの丘に邸宅を構え始め、帝政ローマ期になると、歴代の皇帝たちが競って宮殿を築きました。初代皇帝アウグストゥスを筆頭に、ティベリウス帝、ドミティアヌス帝など、多くの皇帝たちがこの地に宮殿を建設し、その壮麗さから、パラッツォ（Palazzo：イタリア語で宮殿の意味）、パレス（Palace：英語で宮殿の意味）という言葉の語源にもなりました。

ティベリウス帝が建設したドムス・ティベリアナ、フラウィウス朝のドミティアヌス帝が建設したドムス・フラウィアなど、複数の宮殿が建てられましたが、ティベリウス帝の宮殿を除き、その他の宮殿群はドムス・アウグスターナと呼ばれることもあります。アウグストゥス帝は自身の宮殿であるドムス・アウグスティの隣にアポロン神殿も建設しました。また、古代ローマ時代を通して、ユノやマイアを崇拝するルペルカーリア祭が開催される場所でもありました。

現在のパラティーノの丘



現在、パラティーノの丘は、フォルム・ロマヌムやコロッセウムと並んで、広大な屋外博物館として一般に公開されています。アウグストゥス帝の妃リウィア・ドルシッラの宮廷とされるドムス・リウィアエや、キュベレーを祀るキュベレー神殿など、数多くの遺跡が残されており、その歴史的な価値を伝えています。ドムス・リウィアエの隣には、ドムス・ティベリアナが斜面に沿って建設されています。丘の中央には、フラウィウス朝の皇帝たちが整備したドムス・フラウィアが広がっており、その後の皇帝たちもキルクス・マクシムス方向へ増築を続けました。キルクス・マクシムスから見えるパラティーノの建物群は、主にセプティミウス・セウェルス帝が増築したドムス・セプティミ・セウェリです。また、この宮殿の横には、戦車競技場のようなスタディオン（ドミティアヌスのヒッポドローム）もあります。

パラティーノの丘の主な見どころ




ローマの七丘



パラティーノの丘は、ローマの七丘の一つです。ローマの七丘には、都市ローマ成立前に人が定住したとされる「初期ローマの七丘」、都市ローマの起源となった「ローマの七丘」、そして現代の「現代のローマ七丘」があります。

  • - 初期ローマの七丘: オッピウス、パラティウム、ウェリア、ファグタル、ケルマルス、カエリウス、キスピウス
  • - ローマの七丘: アウェンティヌス、カピトリヌス、カエリウス、エスクイリヌス、パラティヌス、クイリナリス、ウィミナリス
  • - 現代のローマ七丘: アウェンティヌス、カピトリヌス、パラティヌス、クイリナリス、ホルトゥロルム、ヤニクルム、オッピウス

まとめ



パラティーノの丘は、ローマの建国神話から、古代ローマ帝国の隆盛まで、ローマの歴史を語る上で欠かせない場所です。皇帝たちの宮殿が建ち並んだこの丘は、現在もその歴史的な重みを静かに伝えています。ローマを訪れる際には、ぜひパラティーノの丘を訪れ、古代ローマの息吹を感じてみてください。

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