ビトウィーン・ザ・バトンズ

ローリング・ストーンズの革新的アルバム『ビトウィーン・ザ・バトンズ』：実験性と独自性の融合

1967年、ローリング・ストーンズは5枚目のオリジナルアルバム『ビトウィーン・ザ・バトンズ』(Between the Buttons)をリリースしました。イギリスでは5作目、アメリカでは7作目となる本作は、全英3位、全米2位という商業的成功も収めました。プロデューサーはアンドリュー・ルーグ・オールダム、レコーディングエンジニアにはデイヴ・ハッセンジャーとグリン・ジョンズが参加しています。

制作背景と音楽性

レコーディングは1966年8月、カリフォルニア州ロサンゼルスのRCAスタジオ、そして11月にはロンドンのオリンピック・スタジオで行われました。本作は、ストーンズが初めてアルバム全体をトータルで制作した作品であり、前作『アフターマス』で示した実験的な音楽性をさらに発展させています。

1966年は、ビートルズの『リボルバー』、ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』、ボブ・ディランの『ブロンド・オン・ブロンド』、マザーズ・オブ・インヴェンションの『フリーク・アウト！』など、ロックの可能性が大きく広がった時代でした。ストーンズもまた、これらの作品に影響を受け、進むべき方向を探りながら制作に臨みました。特にキンクスの影響も強く見られ、前作を超える革新的な作品を生み出す必要性を強く感じていたことがうかがえます。

ブライアン・ジョーンズは、『アフターマス』でシタールやダルシマー、マリンバなどの新楽器を導入したことに続き、本作ではリコーダー、サックス、ビブラフォンなどさらに幅広い楽器に挑戦しています。キース・リチャーズもギターに加え、ピアノやオルガンを演奏するなど、メンバーの楽器演奏の幅も広がっています。また、本作から一部楽曲においてベースをビル・ワイマンからリチャーズが担当するようになりました。そして、本作はオールダムがプロデュースした最後のストーンズのオリジナルアルバムとなりました。

個性的なジャケットデザイン

『ビトウィーン・ザ・バトンズ』は、タイトルとジャケット写真が英米盤で統一された初めての作品です。表ジャケットはジェレド・マンコウィッツ撮影で、レンズにワセリンを塗布したことで外側がぼやけた独特の加工が施されています。タイトル表記はチャーリー・ワッツの服のボタンに小さく書かれているのみで、非常にシンプルで謎めいたデザインとなっています。撮影時、ジョーンズは全く協力的ではなかったというエピソードも残されています。

裏ジャケットにはワッツが描いた漫画と短い詩が掲載されています。この漫画はオールダムからの依頼で描かれたもので、ワッツ自身もその時初めてアルバムのタイトルを知ったそうです。この漫画は、人気者でありながら音楽業界の権力者から嫌われているストーンズの状況を表現したものだと考えられています。日本盤は、表ジャケットは英米盤と同様ですが、アルバムタイトルとアーティスト名が明記されています。裏ジャケットは別の写真が使われ、見開きジャケット仕様でワッツの漫画が内側に収められています。「ボタンの間に」という邦題も付けられました。

英米盤の違いと再発

イギリス盤はシングル「夜をぶっとばせ/ルビー・チューズデイ」と同日の1967年1月20日にリリースされました。当時のイギリス音楽業界の慣例に従い、アルバムにはシングル曲は収録されていませんでした。アメリカ盤は2月11日に発売され、「夜をぶっとばせ」と「ルビー・チューズデイ」が収録され、「バック・ストリート・ガール」と「プリーズ・ゴー・ホーム」が削除されています。これらの2曲は、同年発売の米国向け編集アルバム『フラワーズ』に収録されました。

2002年には、イギリス盤とアメリカ盤両バージョンがアブコ・レコードよりリマスターされ、SACDとのハイブリッドCDとして再発。2016年には、デッカ時代のオリジナルアルバムのモノラル版を復刻したボックスセット『ザ・ローリング・ストーンズ MONO BOX』でモノラル版が初めてCD化されました。

評価と収録曲

イギリスでは3位と前作を超えることはできませんでしたが、アメリカでは2位まで上昇しゴールドディスクを獲得するなど好意的に迎えられました。ミック・ジャガーは当初は本作を気に入っていましたが、後に評価を変え、多くの音楽評論家やファンとは異なる見解を示すようになりました。しかしながら、『ローリングストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500』では357位にランクインしており、その重要性を再認識されています。

収録曲は全曲ジャガー/リチャーズの作詞作曲です。英米盤で収録曲が異なるため、それぞれのトラックリストは別途記載されています。（※ここでは省略）

参加ミュージシャン

ローリング・ストーンズのメンバーに加え、イアン・スチュワート、ニッキー・ホプキンス、ジャック・ニッチェ、ニック・デカーロ、シャーリー・ワッツなどのゲストミュージシャンも参加し、アルバムに彩りを添えています。（楽器担当は詳細を省略）

『ビトウィーン・ザ・バトンズ』は、実験的な音楽性と独特のジャケットデザイン、そして英米盤の違いなど、様々な要素が絡み合った、ローリング・ストーンズの歴史において重要な位置を占めるアルバムと言えるでしょう。

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