ビャウォヴィエジャの森

ビャウォヴィエジャの森：ヨーロッパ最後の原生林

ビャウォヴィエジャの森は、ポーランドとベラルーシの国境にまたがる広大な原生林です。この森は、ヨーロッパに残された最後の原生林の一つとして非常に重要な存在です。豊かな自然と独特の生態系が評価され、ユネスコの世界遺産（自然遺産）にも登録されています。

名称について

この森は、複数の言語で異なる名前を持っています。英語では「Białowieża Forest」、ポーランド語では「Puszcza Białowieska」、ベラルーシ語では「Белавежская пушча」、ロシア語では「Беловежская пуща」と表記されます。英語名の「Białowieża」は、森林域の中央に位置するポーランド東端の村の名前であり、「ビャウォヴィエジャの森」という意味になります。ユネスコの世界遺産の旧登録名では、ベラルーシ語名も併記されていました。日本語では、「ベラヴェシュスカヤ・プーシャ/ビャウォヴィエジャの森」と表記されることもありましたが、現在では「ビャウォヴィエジャの森」に統一されています。

地理と生物相

ビャウォヴィエジャの森は、寒帯と温帯の移行地域に位置し、東ヨーロッパの針葉樹林と西ヨーロッパの広葉混交樹林が混ざり合う原生混合林です。ポーランド側はビャウォヴィエスキ国立公園、ベラルーシ側はベロヴェジュスカヤ・プシュチャ国立公園として、両国の国立公園に指定されています。

森の主な樹種は、オーク、シナノキ属、シデです。この地域はオウシュウトウヒの南部生息地の南限、フユナラの分布の北東限にあたります。森には多くの枯れ木があり、様々な生物の微生息地となっているため、生物多様性が非常に高くなっています。毎年、真菌類と無脊椎動物の新種が発見されています。また、オオアカゲラ、ミユビゲラなどのキツツキ科の鳥類、ヨーロッパバイソンなどの有蹄類、オオヤマネコ、タイリクオオカミ、カワウソなど、多様な動物が生息しています。

北東部のベラルーシ領内には、森林に覆われた島々が点在するフェンがあり、ヒメツルスゲ、ヤチスゲなどのスゲ属の植物が生えています。この地域にはハシボソヨシキリやヨーロッパバイソンなども生息しています。

歴史

ビャウォヴィエジャの森は、15世紀初めからポーランド王をはじめとする君主の狩猟地として保護されてきました。しかし、密猟によって多くの動物が数を減らし、一部の種は姿を消しました。1919年には、森で最後のヨーロッパバイソンが撃たれ、野生種が一旦絶滅しました。その後、動物園で飼育されていたものが繁殖され、森に再び放たれました。

1976年にポーランド側がユネスコの生物圏保護区に指定され、ベラルーシ側は1993年に指定されました。ポーランド側は1979年に、ベラルーシ側は1992年にユネスコの世界遺産に登録されました。また、1991年には、ベラルーシ側の森の奥にある要人別荘で、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの首脳らによる独立国家共同体創設に関する協定（ベロヴェーシ合意）が結ばれました。

2015年には、ベラルーシ国内にある「ディコエ・フェン泥炭地」がラムサール条約に登録され、その情報センターはベロヴェジュスカヤ・プシャ国立公園内に設置されています。

ユネスコ世界遺産

ビャウォヴィエジャの森は、以下の登録基準を満たして世界遺産に登録されました。

(9)：陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であること。
(10)：生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいること。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれること。

登録当初は自然美を理由とする基準 (7) が適用されていましたが、2014年の再推薦で生態系や生物多様性を理由とする基準に変更されました。

関連項目

ヨーロッパバイソン
ポーランドの国立公園の一覧
リトアニア＝ポーランド国境

外部リンク

The UNESCO official site （英語）
* Trees of Bialowieza National Park （英語）

もう一度検索