ビョルン・ワルデガルド

スウェーデンの英雄、ビョルン・ワルデガルド：40年に渡るラリー人生

ビョルン・ワルデガルド（1943年11月12日 - 2014年8月29日）。その名は、世界ラリー選手権（WRC）の歴史に永遠に刻まれた、スウェーデン出身の伝説的ラリードライバーです。1979年、WRC初代ドライバーズチャンピオンに輝いた彼の華麗なるキャリアは、40年以上に及びます。

農家の息子から世界王者へ

農家の息子として生まれたワルデガルドは、1962年、フォルクスワーゲン・ビートルでラリーキャリアをスタートさせます。スウェーデンにはフォルクスワーゲンのナショナルチームが存在したため、ビートルでのデビューは当時としてはごく一般的なことでした。しかし、彼の才能はすぐに開花。2台目のビートルは割引価格で購入できるほどの実力を見せつけました。

その後、ポルシェに乗り換え、1967年と1968年にはスウェーデン国内選手権でチャンピオンを獲得。1968年と1969年には国際スウェーデンラリー（現在のWRCラリー・スウェーデン）を制覇します。1969年には、スウェーデンのポルシェ輸入業者の後押しを受けて、ラリー・モンテカルロに参戦。この大会で、ヘンリ・トイヴォネンの父パウリや元F1ドライバーのヴィック・エルフォードといった強豪を破り、見事優勝を飾りました。翌年も連覇を達成し、彼は一躍国際的なラリードライバーとして注目を集めることになります。

多彩な挑戦と栄光、そして葛藤

1970年代半ばには、自ら改造したポルシェ・カレラRSRでラリークロスにも参戦。1974年のERA欧州ラリークロス選手権では2位という好成績を残しています。また、1971年にはル・マン24時間レースにも挑戦しました。

1973年に誕生したWRCにも参戦。トヨタ、ランチア、フォードといった名門チームを渡り歩きながら、数々の勝利を掴みます。ランチア時代には、チームメイトだったサンドロ・ムナーリとの間で確執が生まれました。特に1976年のサンレモラリーでは、チーム監督のチェザーレ・フィオリオによる不公平な采配により、ワルデガルドはムナーリに有利な状況に置かれながらも優勝を掴みましたが、その夜にはフォードへの移籍を決意。ランチアにとって、オールラウンダーとしてどんな路面でも結果を残せるワルデガルドの移籍は大きな痛手となりました。

フォードでの全盛期とWRC初代チャンピオン

フォード・エスコートRS1800を駆るワルデガルドは、彼のWRCキャリアで最も輝かしい時期を過ごします。1977年には3勝を挙げ、1979年には、最終戦コートジボワール・ラリーでの戦略的な走りにより、僅差でハンヌ・ミッコラを制し、WRC初代ドライバーズチャンピオンの栄冠に輝きました。

トヨタ時代と最年長勝利

1980年代以降はトヨタで活躍。グループAマシンのセリカGT-Fourが登場するまでは、チャンピオン争いには絡めませんでしたが、アフリカラリーで5勝、ニュージーランドでも優勝するなど、高い実力を示しました。1990年のサファリラリーでの勝利は、46歳での優勝というWRC最年長勝利記録となり、長年破られることはありませんでした。

ダカールラリーへの挑戦と引退

1990年から1992年にかけてはダカール・ラリーにも参戦。しかし、ワルデガルドにとって、ダカールラリーの長距離戦は自身の走り方とは異なるものであり、1992年を最後にWRCから引退しました。1992年のサファリラリーの練習走行中の事故により、腕を骨折。それでも参戦を試みたものの、マシンの炎上により、事実上の引退を決意しました。

引退後もラリー界に貢献

引退後も、ヒストリックラリーへの参戦や若手育成に尽力。2011年には68歳でイーストアフリカン・サファリ・クラシックで優勝を果たすなど、その情熱は衰えることはありませんでした。2014年、肝臓がんのため70歳で逝去。

ビョルン・ワルデガルドは、類まれな才能と強い意志、そしてラリーへの飽くなき情熱で、WRCの歴史に大きな足跡を残した偉大なドライバーでした。彼の功績は、これからもラリーファンたちに語り継がれていくでしょう。

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