ビリー・バッド

概要

ハーマン・メルヴィルによる中編小説です。生前は未完のまま残され、作家の死後30年以上を経た1924年にイギリスで初めて出版されました。『ビリー・バッド、セイラー（Billy Budd, Sailor）』が正式な原題として知られています。

物語

物語の舞台は英国海軍の戦艦です。商船から軍艦に徴用された若者ビリー・バッドは、他の水兵たちの企む陰謀に巻き込まれてしまいます。この策略により困難な状況に追い込まれたビリーは、ある事件を引き起こします。艦長は、事態を受けて軍法会議を開き、ビリーに対して死刑を宣告します。小説は、無垢な主人公が、周囲の悪意や軍隊という組織の規則の中で悲劇的な運命をたどる様を描いています。

翻案作品

本作は、その深いテーマと劇的な筋立てから、様々な芸術形式で翻案されています。著名な例として、1949年にルイス・O・コックス他によって劇化され、1951年にはニューヨークのブロードウェイでも上演された舞台作品があります。音楽分野では、イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンがこの物語を基にしたオペラを作曲し、1951年に初演されました。さらに、ピーター・ユスティノフが監督・主演を務めた映画『奴隷戦艦』（原題：Billy Budd）が1962年に公開されています。

日本語訳

日本語においても複数の翻訳が出版されており、本作に触れる機会が提供されています。主なものとして以下の訳があります。

坂下昇訳（岩波文庫、1976年）
留守晴夫訳（圭書房、2009年）。訳者は松原正氏の門下。
飯野友幸訳（光文社古典新訳文庫、2012年）。巽孝之氏による解説が付されています。

関連事項

物語の背景やテーマに関連する事柄として、以下のようなものが挙げられます。

捕鯨船：メルヴィル自身の経験や、『白鯨』にも共通する要素。
海峡艦隊：英国海軍の組織。
スピットヘッドとノアの反乱：作中の時代背景となる実際の水兵反乱。
不条理演劇：主人公の置かれる状況が、論理を超えた不条理として捉えられる視点。
白鯨：同じくハーマン・メルヴィルの代表作。

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