ビルマニシキヘビ

ビルマニシキヘビ：巨大なヘビの生態と外来種問題

ビルマニシキヘビ（学名：Python bivittatus）は、ニシキヘビ科に属する大型のヘビです。その巨大な体躯はヘビの中でも世界最大級で、東南アジアに広く分布しています。かつてはインドニシキヘビの亜種とされていましたが、2009年に別種として独立しました。

分布と生息地

ビルマニシキヘビは、インド東部から東南アジアにかけて広範囲に生息しています。具体的には、ネパール南東部、ブータン西部、バングラデシュ南東部、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、マレーシア北部、中国南部などが挙げられます。さらに、香港、インドネシアのジャワ島、スラウェシ島南部、バリ島、スンバワ島にも分布が確認されています。これらの地域では、水辺を好み、草原、沼地、湿地、岩山、森林、渓谷、開けたジャングルなど多様な環境に生息しています。木登りも得意で、尾を使って枝を掴むことができます。水中に長時間潜ることもできますが、普段は水辺にいることが多いようです。

形態

体色は黄土色で、黒く縁取られた茶色の斑紋が特徴的です。頭部にも黄土色の模様があり、明瞭な茶色の模様が見られます。ビルマニシキヘビは眼と上唇板が直接接しない点で、インドニシキヘビとは異なります。野生では通常5m程度まで成長しますが、7mを超える個体は稀です。雌は雄よりも大きく、体重も重い傾向があります。飼育下での計測では、全長5mの雌が75kgに達する一方、雄は3m程度の個体で18.5kg程度でした。全長5mを超える個体は稀ですが、2023年には全長5.79mの個体が捕獲された記録もあります。過去には、体重182.8kgの雌個体「Baby」が記録されており、非常に大型化することがわかります。

ジャワ島、バリ島、スラウェシ島には、小型の亜種であるコガタビルマニシキヘビが生息しており、平均全長は2m程度です。

外来種としての問題

ビルマニシキヘビは、ペットとして飼育されていた個体が逸出し、アメリ[[カ合衆国]]フロリダ州に定着し、外来種として深刻な問題を引き起こしています。特にエバーグレーズ国立公園では個体数が激増しており、在来の生態系に大きな影響を与えています。

1990年代から2000年代にかけて、ペット取引で人気を博し、大量に輸入されました。1992年のハリケーン・アンドリューによって飼育施設が破壊され、逃げ出した個体が繁殖したことも、個体数増加の原因の一つです。2017年の遺伝子研究では、フロリダの個体群はビルマニシキヘビとインドニシキヘビの雑種である可能性も示唆されています。

ビルマニシキヘビの侵入は、フロリダ州の哺乳類、鳥類、爬虫類の個体数を著しく減少させています。アライグマやオポッサム、オジロジカなどの哺乳類の減少が顕著で、ウサギに至っては絶滅した地域もあります。また、在来の捕食動物との競合や、アメリ[[カトキコウ]]などの鳥類への影響も懸念されています。アメリ[[カアリゲーター]]との競合も確認されており、捕食行動も確認されています。

駆除活動も行われており、2013年には駆除コンテストが開催され、多数の個体が捕獲されました。現在では、毎年10日間開催されるイベントとなっています。2023年には、1050人の参加者によって209匹が駆除されました。また、カの血液を調査することで、ビルマニシキヘビの存在を特定する新しい方法も導入されています。

生態

ビルマニシキヘビは主に夜行性で、熱帯雨林に生息します。若い個体は木にも登りますが、大型個体は主に地上で生活します。泳ぎも得意で、水中に30分も潜ることができます。冬眠も行い、木の洞や川岸の穴などで過ごします。

単独で行動することが多く、繁殖期にのみペアで見られます。早春に繁殖し、雌は12-36個の卵を産みます。母親は卵が孵化するまでとぐろを巻いて守り、筋肉を動かして温度を上げます。孵化した幼蛇は自力で卵から出て、最初の脱皮後に狩りを始めます。飼育下では、単為生殖を行うことも確認されています。

摂餌と消化

ビルマニシキヘビは肉食性で、主に鳥類や哺乳類を捕食します。待ち伏せ型の捕食者で、獲物を待ち伏せて、素早く襲いかかり、締め付けてから丸呑みします。ネズミなどの小型哺乳類から、豚やヤギのような大型哺乳類まで捕食し、フロリダではワニやシカの捕食も報告されています。

消化プロセスは、消化器全体の大規模な再構築を伴います。胃の酸性度を上げ、腸を肥大させ、心臓を肥大させます。消化には多くのエネルギーを必要とし、酸素消費量も安静時の17〜40倍に増加します。消化プロセス全体は8〜14日間続き、食物摂取から排便まで時間がかかります。

人との関わり

ビルマニシキヘビは、ワシントン条約付属書IIに記載されており、IUCNのレッドリストでは危急種に指定されています。生息地の喪失や過剰な捕獲により、野生個体数は減少傾向にあります。保護のため、国際的な保護法の制定と施行が推奨されています。

ペットとしての人気も高く、飼育されることもあります。しかし、その大きさと力強さから、飼育には特別な注意が必要です。飼育下では、成長速度が速く、1年で全長2mを超えることもあります。肥満になりやすいため、適切な給餌が必要です。飼育施設も大型のものが必要になり、一部の地域ではペットとしての飼育を規制しています。日本では、特定動物に指定されており、新規飼育は難しい状況です。

品種も多く、アルビノ個体をはじめ、ラビリンス、グリーン、グラナイトなど、さまざまな模様や色を持つ個体がブリードされています。

ビルマニシキヘビは、その魅力的な姿の反面、外来種問題や飼育の難しさなど、様々な側面を持つ生物です。生態や保全について、より深く理解していく必要があります。

脚注

参考文献

田原義太慶『大蛇全書』グラフィック社、2022年3月25日。ISBN 978-4-7661-3558-9。
中井穂瑞嶺『ディスカバリー 生き物再発見 ヘビ大図鑑 ボア・ニシキヘビ編』誠文堂新光社、2020年7月18日。ISBN 978-4-416-62030-4。

関連項目

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