ピアノ協奏曲第3番 (カバレフスキー)

ドミトリー・カバレフスキー：ピアノ協奏曲第3番ニ長調 作品50

ドミトリー・カバレフスキーが1952年に完成させたピアノ協奏曲第3番ニ長調作品50は、演奏時間およそ18分の中規模な作品です。

概要

この協奏曲は、1948年のヴァイオリン協奏曲、1949年のチェロ協奏曲第1番に続く、ソビエトの青年に捧げられた一連の協奏曲３部作の最終作にあたります。他の2曲と並べて演奏されることを想定しており、比較的小規模にまとめられています。チェロ協奏曲が短調であるのに対し、ヴァイオリン協奏曲と同様に明るい長調が採用されており、若々しい活力と親しみやすい旋律に満ちています。

初演

1953年2月1日、モスクワ音楽院の大ホールにて初演されました。ピアノ独奏は当時15歳だったウラディーミル・アシュケナージ、指揮は作曲者自身のカバレフスキーが務め、モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団が演奏しました。カバレフスキーは本作の作曲を進める中で、当時モスクワ中央音楽学校に在籍していたアシュケナージがベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を見事に弾きこなすのを耳にし、その才能に感銘を受けて初演者に抜擢したと伝えられています。

編成

独奏ピアノに加え、以下の編成で書かれています。

フルート2
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン2
トランペット2
トロンボーン2
ティンパニ他打楽器
弦五部

構成

全3楽章で構成されています。

第1楽章 Allegro molto

ソナタ形式。管弦楽による短い導入に続いて、ピアノが快活で躍動的な第1主題を提示します。展開が進むと、ピアノによって先導される形で、第1主題とは対照的な、どこか民謡のような穏やかさをたたえた第2主題が現れます。三連符が目立つ展開部は、一度管弦楽の力強い響きによって区切りをつけられます。その後、独奏ピアノのためのカデンツァを経て、再現部では第1主題、第2主題が再び現れ、楽章は軽快な雰囲気のうちに閉じられます。

第2楽章 Andante con moto

三部形式。4分の4拍子で始まります。弦楽器のピッツィカートに乗って、ピアノがやや愁いを帯びた表情豊かな主題を奏で、これが展開されます。中間部は8分の6拍子となり、軽やかなワルツへと変化します。このワルツの旋律は、同時期に作曲された児童向けの歌曲「私たちの国」と共通のものが用いられています。中間部が終わると、冒頭の主題が回帰し、静寂の中で楽章が終わります。

第3楽章 Presto

ロンド形式。管弦楽の短い前奏の後、ピアノがまるで玉が転がるような、せわしなくも技巧的なロンド主題を奏でます。次に現れる副次主題は、素朴な民謡風の性格を持っています。ロンド主題が再び奏でられた後には、行進曲を思わせるような堂々とした主題が登場し、楽曲に変化を与えながら展開されます。再びロンド主題と副次主題が現れた後、意外にも第1楽章の第2主題が回帰し、楽章間、ひいては作品全体の統一感を高める役割を果たします。最後は、それまでの勢いを保ったまま、活気にあふれたコーダで華やかに締めくくられます。

逸話

初演での共演後、カバレフスキーとアシュケナージは、モスクワに続きレニングラードやタリンといった都市でもこの第3番協奏曲を演奏しました。これらの演奏会は非常に好評を博したのですが、翌1954年に本作を録音する際、カバレフスキーは初演者であるアシュケナージではなく、既に世界的な名声を確立していたエミール・ギレリスをソリストに起用しました。この出来事から、アシュケナージとの関係に一時的な翳りが見られたようです。

しかし、録音の翌年、1955年のショパン国際ピアノコンクールでアシュケナージが第2位に入賞し、その名声が高まると、カバレフスキーは再びアシュケナージに本作の演奏を持ちかけました。カバレフスキーを怒らせることを嫌ったアシュケナージは、これに応じてしばらくは共演を続けました。さらに1956年にアシュケナージがエリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝し、国際的なスターダムを駆け上がると、カバレフスキーは再度演奏を依頼してきましたが、この時はアシュケナージも多忙となり、他にも弾くべきレパートリーが増えたこと、そしてもはや「若人の協奏曲」というタイトルに示されるような立ち位置の曲を弾く心境ではなくなったことを理由に、丁重に断ったと伝えられています。

それでも、人を不機嫌にさせるのを好まないアシュケナージは、1962年のチャイコフスキー国際コンクールで優勝した後、同コンクールで審査員を務めていたカバレフスキーに対し、若者向けではない「本式」の協奏曲であるピアノ協奏曲第2番（作品64）を演奏する用意があることを自ら申し出ました。これに対するカバレフスキーの反応は、「びっくりして『それはどうもご親切なことで、考えさせてもらいましょう』と言うにとどまった」と、アシュケナージは後に回想しています。もっとも、このやり取りからわずか数ヶ月後にアシュケナージはソ連を離れることとなり、結局カバレフスキーの第2番協奏曲が彼のソリストとして演奏される機会は訪れませんでした。

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参考文献に基づき記述しています。*

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