ピラムモーン

ピラムモーンとは

ピラムモーン（古希: Φιλάμμων, Philammōn）は、古代ギリシア神話に登場する重要な人物の一人です。彼は予言者、音楽家、そして詩人として知られ、特に音楽と詩の分野で多大な功績を残したと伝えられています。その名はピランモーン、ピラモーン、あるいは長母音を省略したピラムモン、ピランモン、ピラモンといった様々な表記で見られます。彼はまた、英雄たちが参加したアルゴナウタイの冒険にも加わった人物としても挙げられています。さらに、古代ギリシア劇において重要な要素であるコロス（合唱隊）を創設した人物であるともされています。

出自とその複雑な系譜

ピラムモーンの血筋は、ギリシア神話の中でも特に神々と関わりの深い複雑なものとして語られています。最も広く知られている伝承によれば、彼は神々の王ゼウスの子であり光、音楽、芸術、予言などを司る神アポローンと、テッサリアー地方の王ダイダリオーンの娘であるキオネーとの間に生まれました。しかし、キオネーは同じ夜に別の神である旅、商業、盗賊などを司るヘルメースとも交わっており、ヘルメースの子として有名な策略家アウトリュコスも生まれています。このため、ピラムモーンとアウトリュコスは異父兄弟でありながら、同じ夜に生まれた双子であったと語られることもあります。

ただし、ピラムモーンの父については、アポローンではなく、ピロニースという人物であったとする別の説や、クレタ島の著名な神官であるカルマーノールの娘クリューソテミスの子として生まれたという伝承も存在し、その出自にはいくつかの異説が見られます。

ピラムモーン自身も子をもうけており、ニュンペーのアルギオペーとの間に、優れた音楽家でありながら後に神々に挑戦して罰せられたタミュリスが生まれました。また、アッティカ地方における重要な神話的人物であるエウモルポスも、彼の子供であると語られる場合があります。

音楽、予言、そして宗教儀礼における功績

ピラムモーンは、その音楽的才能と予言者としての能力によって、古代ギリシア各地で重要な役割を果たしました。特に、アポローンの聖地であるデルポイでは、その名声が広く知られていました。デルポイで開催された聖なる競技祭であるピュティア競技会において、彼はアポローン神を讃えるための讃歌の創作および吟唱競技で、クリューソテミスやタミュリスといった他の著名な音楽家たちと共に、最も初期の優勝者の一人として歴史に名を刻んでいます。これは、彼の音楽家としての技量が非常に高かったことを示しています。

また、ペロポネソス半島のレルネーという地では、ピラムモーンが農業と豊穣の女神デーメーテールを祀るレルナイア祭において、特別な形式の秘儀である「デーメーテール・プロシュムネー」を創設したと伝えられています。これは、彼が単なる音楽家や詩人にとどまらず、重要な宗教儀礼の確立にも関与したことを示唆しています。

さらに、彼はコロス、すなわち古代ギリシアの合唱隊を創始した人物としても言及されることがあります。コロスは特に悲劇や喜劇といったギリシア演劇において中心的な役割を果たしており、もしこの伝承が正しければ、ピラムモーンは古代ギリシアの舞台芸術の発展に計り知れない貢献をしたことになります。

壮絶な最期

ピラムモーンの生涯は、英雄的な最期をもって閉じられました。伝承によると、彼はアポローンの聖地であるデルポイが、好戦的な部族であるプレギュアイ人に攻められた際に、救援を求めるデルポイの訴えに応じて、自らが率いるアルゴスからの援軍と共に駆けつけました。デルポイ側について勇敢に戦ったピラムモーンでしたが、激しい戦闘の中で命を落としたと伝えられています。

ピラムモーンは、音楽、詩、予言といった文化的な側面だけでなく、宗教儀礼の創設者や戦士としての側面も持つ、多才で影響力の大きな人物として、ギリシア神話の中で語り継がれています。彼の物語は、神々との関わり、複雑な家族関係、そして芸術と英雄的な行動が織りなす古代ギリシア世界の一端を示しています。

もう一度検索