ファビュラス・ムーラ

ファビュラス・ムーラ：アメリカ女子プロレス黄金時代の女[[王]]とその複雑な遺産

ファビュラス・ムーラ（本名：メアリー・リリアン・エリソン、1923年7月22日 - 2007年11月2日）は、アメリカ女子プロレス界における不滅のアイコンである。1940年代後半のデビューから2007年の逝去間際まで、リングに立ち続けた彼女は、WWE殿堂入りを果たしただけでなく、長きに渡り女子プロレス界を牽引し、その発展に多大な貢献を果たした。

ムーラのプロレス人生は、10歳の頃、父親に連れられて観戦したプロレスで、女子王者ミルドレッド・バークに憧れたことから始まった。公式には1949年デビューとされるものの、実際はそれ以前から活動していたという説も存在し、当時の女子プロレスの低地位と記録の未整備を反映している。初期は「スレイヴ・ガール・ムーラ」というリングネームで、男性レスラーのセコンドとして活動。観客を魅了するパフォーマンスと、ヒールとしての役割を担った。

その後、「ファビュラス・ムーラ」として本格的にレスラーとして活躍を始め、1956年にはトーナメントを制し、初代WWF女子王者に輝く。この王座を1984年まで保持したという記録は、WWEではNWA時代の記録を公式に認めていないため、実際には数度の王座陥落、奪還を経験しているものの、約28年間、王座を保持していたことは事実である。日本の女子プロレス団体にも参戦し、小畑千代らと激闘を繰り広げた。

1972年には、弟子であるビッキー・ウィリアムスと共に女性として初めてマディソン・スクエア・ガーデンで試合を行い、歴史に名を刻んだ。1980年代、ビンス・マクマホン・ジュニア体制下のWWF（現WWE）が全米進出を果たすと、ムーラは女子部門の中心人物として迎え入れられる。悪徳マネージャー、キャプテン・ルー・アルバーノと組んで、シンディ・ローパーとウェンディ・リヒターとの抗争を繰り広げ、レッスルマニアにも出場。年齢を重ねてもなお、リングに立ち続けた。

1986年に王座を失い第一線からは退いたものの、現役生活は続行。ハーリー・レイスとタッグを組むなど、老いてもなお、プロレス界に貢献。1995年には女性として初めてWWF殿堂入りを果たした。晩年はメイ・ヤングとコンビを組んで、コミカルな役割を担うことも多かった。しかし、1999年には76歳で再びWWF女子王座を獲得。80歳を超えてもなお、現役を続け、WWEへの最後の登場は2007年のサマースラムであった。同年11月、84歳でその生涯を閉じた。

ムーラは、多くの女子レスラーを育成し、女子プロレス界の礎を築いた指導者でもあった。ビビアン・バション、レイラニ・カイ、ウェンディ・リヒターなど、多くのスターレスラーを輩出した。しかし、彼女自身、レスラーの選抜基準や金銭管理において批判も浴び、その複雑な人物像は現在も議論されている。

ファビュラス・ムーラは、女子プロレスのパイオニアとして、また多くのレスラーを育成した師として、アメリカ女子プロレス界に計り知れない影響を与えた。彼女の人生と業績は、プロレス史に永遠に刻まれるであろう。一方で、近年明らかになった、彼女を取り巻く様々な問題や、その複雑な人物像も理解する必要がある。ムーラは、称賛と批判が複雑に絡み合った、記憶に残る存在として、プロレス史に名を刻んでいるのだ。

得意技: スクールガール、ドロップキック、ヘッドシザーズ・ホイップ、フライング・メイヤー、旋回式バックブリーカー、スクープスラム

獲得タイトル: NWA世界女子王座（5回）、WWF女子王座（4回）、JPWA女子王座、WWF殿堂（1995年）、NWA殿堂（2012年）

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