アジアハイウェイ
アジアハイウェイ（Asian Highway Network）とは
アジアハイウェイは、アジア32カ国を横断する総延長14.1万キロメートルに及ぶ幹線道路網であり、現代のシルクロードを構築する壮大なプロジェクトです。この道路網は、主に既存の道路を最大限に活用し、国際的な交通と経済の発展を促進することを目的としています。トルコからは欧州自動車道路網に接続し、ヨーロッパとの連携も視野に入れています。英語での略称は「AH」であり、国際連合アジア太平洋経済社会委員会（ESCAP）が運営事務局を担当しています。
日本国内では、AH1号線が唯一の通過路線であり、その全長は1,108kmに及びます。この路線は、日本の主要都市を結び、アジア諸国へのアクセスを容易にしています。
経緯
アジアハイウェイの構想は、1959年に国際連合アジア極東委員会（ECAFE）によって提唱されました。その後、1968年には国際連合アジア太平洋経済社会委員会（ESCAP）に「AHP事務局」が設立され、具体的な計画が始まりました。
1969年4月には、第一回アジアハイウェイモーターラリーがビエンチャンからシンガポール間3400kmで開催され、このプロジェクトへの関心が高まりました。1970年11月には、第二回ラリーがテヘランからダッカ間6800kmで行われ、9か国から62台の車が参加しました。
1988年には中国がプロジェクトに参加し、1992年から1993年の間には、日本が資金援助を行い、道路網の見直しや設計基準の改訂などの調査を実施しました。
2003年11月には、日本もアジアハイウェイへの路線参加を表明し、同月18日にはバンコクで「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定」が採択されました。2004年4月26日には、ESCAPにて23ヶ国が調印し、日本もこの協定に署名しました。
2005年7月4日には、カンボジア、中国、日本、ミャンマー、韓国、スリランカ、ウズベキスタン、ベトナム、ロシアの9カ国で協定が発効しました。その後、各国が次々と協定を批准し、アジアハイウェイのネットワークが拡大していきました。
主要ルート
アジアハイウェイには、主要幹線ルートとして、以下の8つのルートが存在します。
1. AH-1: 東京を起点とし、福岡、釜山、ソウル、北京、ハノイ、バンコク、テヘランなどを経由し、トルコの国境カプクレに至る全長20,710kmのルートです。
2. AH-2: インドネシアのデンパサールを起点とし、ジャカルタ、シンガポール、バンコク、ダッカ、ニューデリー、テヘランなどを経て、イランのコスラヴィに至る10,711kmのルートです。
3. AH-3: ロシアのウランウデを起点とし、ウランバートル、北京、上海、チェンライなどを経由し、タイとミャンマーの国境に至る6,286kmのルートです。
4. AH-4: ロシアのノボシビルスクを起点とし、ウルムチ、イスラマバード、ラホールなどを経て、パキスタンのカラチに至る4,811kmのルートです。
5. AH-5: 上海を起点とし、西安、ウルムチ、アルマトイ、タシュケント、バクー、イスタンブールなどを経て、トルコの国境カプクレに至る9,842kmのルートです。
6. AH-6: 釜山を起点とし、平壌、ウラジオストク、モスクワなどを経由し、ベラルーシとの国境クラスノエに至る10,407kmのルートです。
7. AH-7: ロシアのエカテリンブルクを起点とし、アスタナ、タシュケント、カーブル、クエッタなどを経て、パキスタンのカラチに至る4,776kmのルートです。
8. AH-8: ロシアのトルピュノブカを起点とし、サンクトペテルブルク、モスクワ、バクー、テヘランなどを経て、イランのバンダレ・エマームに至る4,435kmのルートです。
路線番号
アジアハイウェイの路線番号は、「AH」に続いて1桁から3桁の数字が付けられています。1桁の番号は、複数の小地域を通過する主要幹線に割り当てられ、2桁と3桁の番号は、特定の小地域内や加盟国内の路線に割り当てられます。例えば、東南アジアの小地域には10番台から29番台、100番台から299番台の番号が使用されます。
道路網と各国の整備
アジアハイウェイには多くの国々が参加しており、各国の延長距離は以下の通りです。アフガニスタン（4,247km）、アルメニア（958km）、アゼルバイジャン（1,442km）、バングラデシュ（1,806km）、ブータン（1km）、カンボジア（1,340km）、中国（26,699km）、北朝鮮（1,320km）、ジョージア（1,154km）、インド（11,432km）、インドネシア（4,115km）、イラン（11,218km）、日本（1,108km）、カザフスタン（13,189km）、キルギス（1,695km）、ラオス（2,318km）、マレーシア（1,595km）、モンゴル（4,286km）、ミャンマー（3,003km）、ネパール（1,321km）、パキスタン（5,377km）、フィリピン（3,517km）、韓国（907km）、ロシア（16,869km）、シンガポール（19km）、スリランカ（650km）、タイ（5,101km）、タジキスタン（1,925km）、トルコ（5,254km）、トルクメニスタン（2,204km）、ウズベキスタン（2,966km）、ベトナム（2,678km）。
日本
日本では、国土交通省が2005年に「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定」が発効したことを受け、アジアハイウェイの標識を順次設置しています。日本橋を起点とし、東京から福岡までの高速道路網（首都高速道路、東名高速道路、名神高速道路、中国自動車道、山陽自動車道、広島岩国道路、関門自動車道、九州自動車道、福岡都市高速道路）がAH-1に編入されています。
中国
中国は1988年にアジアハイウェイ・プロジェクトに参加し、1993年に国内に初めて路線が設定されました。しかし、中国国内のすべての路線がESCAPによって承認されたわけではなく、一部の区間は「候補路線」として扱われています。
参考文献
山内洋隆著「遥かなるアジアハイウェイ」（JETROレポート、2004年）や、UNESCAPのデータなどが参考資料として挙げられます。
関連項目
アジアハイウェイに関連する項目として、アラブ・マシュレク国際道路ネットワーク、パンアメリカンハイウェイ、欧州自動車道路、トランス・アフリカ・ハイウェイ、アジア横断鉄道などがあります。
外部リンク
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