フィッシュパイ

フィッシュパイ：イギリスを代表するシーフード料理

フィッシュパイは、イギリスの伝統的な家庭料理です。白身魚を、クリーミーなソースで和え、マッシュポテトで焼き上げた一品。パイ生地を使わないのが特徴で、その見た目と優しい味わいで人々を魅了してきました。

材料と調理法

一般的なフィッシュパイには、タラ、コダラ、オヒョウなどの白身魚が使用されます。燻製された魚を使用することもあります。魚は、牛乳を使ったホワイトソースやチェダーチーズソースで和えられます。エビやゆで卵を加えることも多く、より豊かな風味と食感を生み出します。

深皿に材料を入れ、オーブンで焼き上げます。一般的なパイのように、パイ生地で覆うことはありません。代わりに、マッシュポテトで表面を覆うことで、中身を包み込み、保温性を高めています。マッシュポテトには、チーズや玉ねぎ、リーキなどを加える場合もあります。

この料理は、「フィッシャーマンズパイ」と呼ばれることもあります。これは、マッシュポテトで覆う点が、挽肉を使ったシェパーズパイと似ているためです。どちらも、シンプルながらも満足度の高い一品として、古くから親しまれています。ジャガイモの代わりにサツマイモを使うバリエーションも存在し、様々なアレンジが楽しまれています。

王室とフィッシュパイ：悠久の歴史

フィッシュパイの歴史は古く、イギリス王室とも深い関わりがあります。ヘンリー1世の時代から、王室ではシーフードを使ったパイが食されてきました。1100年の戴冠式では、クリスマスにヤツメウナギのパイが作られたと伝えられています。四旬節には、ニシンを使ったフィッシュパイが王に献上された記録も残っています。

1530年頃からは、魚介類をパイ生地で包んで献上する習慣が広まり、ウェールズの修道院長がヘンリー8世にウナギと鯉のパイを献上したという逸話も残っています。このウナギパイの献上はその後も続き、ウェールズ公ジョージやヴィクトリア女王にも献上されたという記録が残っており、王室にとって特別な料理であったことが伺えます。

地域ごとのバリエーション

コーンウォール地方では、「スターゲイジーパイ」と呼ばれる独特のフィッシュパイが知られています。このパイは、イワシの頭がパイ生地から飛び出しているのが特徴で、見た目もユニークな一品となっています。

また、ロシアなど東スラヴ地域でも、ピロークの一種としてフィッシュパイが食べられています。地域によって材料や調理方法に違いが見られるのも、フィッシュパイの魅力の一つです。

まとめ

フィッシュパイは、シンプルながらも奥深い味わいと、長い歴史を持つイギリスの伝統料理です。家庭料理として親しまれる一方、王室とも深い関わりを持ち、地域ごとのバリエーションも存在するなど、その魅力は多岐に渡ります。クリーミーなソースとホクホクのマッシュポテト、そして様々な魚介類の組み合わせは、老若男女問わず多くの人々を魅了し続けています。

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