フォーミダブル (空母)

フォーミダブル (HMS Formidable, R67) 航空母艦：激動の艦歴

第二次世界大戦において、イギリス海軍は数々の航空母艦を運用しました。その中でも、イラストリアス級3番艦であるフォーミダブル(HMS Formidable, R67)は、地中海、インド洋、そして太平洋と、世界各地で活躍した艦として知られています。その艦名は「恐るべき」を意味するformidableで、イギリス海軍において何度か使用されてきた由緒あるものです。

建造と進水事故

フォーミダブルは、ベルファストのハーランド・アンド・ウルフ社で建造されました。1937年6月17日に起工、1939年8月17日に進水しました。しかし、この進水式典では予期せぬ事故が発生します。予定よりも早く船体が勝手に動き出し、進水してしまうという珍事が起きたのです。幸い船体への損傷はありませんでしたが、飛散した破片によって死者1名、負傷者20数名という痛ましい結果となりました。この事故から、「自身を打ち上げた船」という異名も付けられることとなります。

大西洋とインド洋での活躍

1940年10月31日に就役したフォーミダブルは、試験の後、スカパ・フローに到着します。当時、大西洋ではドイツ海軍の通商破壊活動が連合国のシーレーンを脅かしており、イギリス海軍はこれに対抗するため、フォーミダブルを中心としたK部隊を編成します。K部隊はアゾレス諸島周辺を捜索し、船団護衛任務にも従事しました。その後、フォーミダブルはインド洋に進出し、イタリア領ソマリランドやマッサワへの空襲を実施します。これらの作戦で、フォーミダブルはイギリス海軍の通商防衛、そして敵への攻撃に重要な役割を果たしました。

地中海での戦い

地中海では、マルタ島への輸送船団護衛や、トリポリへの攻撃作戦などに参加しました。そして、1941年3月28日に発生したマタパン岬沖海戦では、フォーミダブルの艦上攻撃機がイタリア艦隊を攻撃し、イタリア海軍戦艦ヴィットリオ・ヴェネトへの魚雷攻撃や、重巡洋艦ポーラへの命中弾など、大きな戦果を挙げました。しかし、この地中海での活躍は長くは続きませんでした。同年5月、カルパトス島空襲からの帰還途中、ドイツ空軍の急降下爆撃を受け、飛行甲板に大きな損害を受けます。この損傷は深刻で、アメリカ合衆国での修理を余儀なくされました。

インド洋と太平洋での戦い

修理を終え、1942年には東洋艦隊に編入。セイロン沖海戦では、直接戦闘には参加しませんでしたが、インド洋での日本海軍との攻防に重要な役割を果たしました。その後、ソロモン諸島のウォッチタワー作戦への陽動作戦にも参加。1944年には地中海に戻り、北アフリカ戦線やイタリア戦線で活躍しました。また、ノルウェーのフィヨルドに潜むドイツ戦艦ティルピッツへの攻撃にも参加。日本軍との交戦に備え、艦載機をアメリカ製の最新鋭機に更新し、沖縄戦にも参加。この頃には、アメリカ海軍の艦上機との共同作戦も行われるようになりました。

特攻隊の攻撃と終戦

沖縄戦では、日本軍の特攻隊の攻撃を受けます。5月4日と9日の2度にわたり、零式艦上戦闘機による特攻を受けましたが、飛行甲板の装甲板が効果を発揮し、大きな被害を防ぎました。しかし、艦載機の損失は大きく、修理と戦力補充のため、シドニーに帰港しました。終戦後、老朽化と修理費用高騰のため、1947年に予備役となり、1956年にスクラップとして廃棄されました。

戦功とその後

フォーミダブルは、その輝かしい戦歴から、9個の戦闘名誉章を受章しました。そして、2021年には、イギリス海軍の新鋭フリゲートに「フォーミダブル」の名が継承されることが発表されました。これは、フォーミダブルの戦歴が将来のイギリス海軍の航空母艦運用にインスピレーションを与え続けることを示しています。

まとめ

フォーミダブルは、第二次世界大戦におけるイギリス海軍の航空母艦として、数々の激戦を戦い抜いた艦です。その艦歴は、戦争の激しさ、そして人々の勇気と悲しみを物語る貴重な歴史的記録となっています。 その名は、今後もイギリス海軍の歴史に刻まれ続けることでしょう。

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