フツーリシュチナ

フツーリシュチナ：ウクライナ山岳地帯の文化と歴史

フツーリシュチナ（Гуцульщина）は、ウクライナのカルパティア山脈南西部に位置する、フツル人と呼ばれる山岳民族が暮らす地域です。その中心都市はイヴァーノ＝フランキーウシク州のコーシウであり、行政と商業の中心地として機能しています。

地理的特徴

フツーリシュチナは、ハルィチナー、ブコヴィナ、ザカルパッチャの一部を構成し、チェレモシュ川、シレト川、プルート川などの河川が流れています。南北の境は、ゴルガヌィ山脈やチョルノホーラ山脈といった山々と、川が流れる険しい渓谷によって形成されています。民族学的な見地からは、ゼレーナ＝デリャトィン＝ヤーブルニウ＝ピストィニ＝コスィウ＝クートィ＝ヴィジュヌィツャを結ぶ線が北部の境界とされています。

歴史

中世

フツーリシュチナは、キエフ大公国の時代にはその支配下にあり、12世紀にはハールィチ・ヴォルィーニ大公国の支配を受けました。14世紀にはポーランド王国の領土に組み込まれました。15世紀初頭のポーランドの歴史書には、ジャブイェに関する記録が残されており、フツーリシュチナに関する歴史上初の記録とされています。

近代

17世紀から18世紀にかけては、オプルィーシュクィの支配下に置かれ、特にオレークサ・ドーウブシュが指揮を執った時代には、近隣地域とともにポーランドやウクライナのシュラフタの支配から脱し、実質的な独立状態にありました。その後、ハプスブルク君主国の統治領となり、農奴制が敷かれましたが、これに対し1840年代には蜂起が発生しました。

1911年には、フナート・ホトケーヴィチによりフツル人のアマチュア民衆演劇が行われ、ムィハーイロ・コツュブィーンシクィイによってフツーリシュチナを舞台にした中編小説『忘れられた祖先の影』が発表されました。この小説は後に映画化され、『火の馬』として知られています。

独立運動

20世紀初頭には、ウクライナ急進党の結成やウクライナ・シーチ銃兵隊の戦い、そしてロシア革命後の独立運動が活発化しました。第一次世界大戦後、フツーリシュチナはルーマニア、ポーランド、チェコスロヴァキアに分割されましたが、1939年にはソ連領となり、第二次世界大戦後にはウクライナ・ソヴィエト社会主義共和国の一部となりました。

1991年のウクライナ独立に伴い、フツーリシュチナは独立ウクライナの地方となり、現在に至っています。

文化

長年にわたる分割統治にもかかわらず、フツーリシュチナでは独自の伝統、生活様式、文化が育まれてきました。深山という地理的条件が、フツル人同士の交易を促進し、独特の文化を形成する要因となりました。

フツル・カルパト山脈の主な高峰

ホヴェールラ山(Говерла) - 2061 m
ブレベネスクル(Бребенескул) - 2036 m
ピープ＝イヴァーン(Піп-Іван) - 2026 m

主な河川

トィーサ[川] - 966 km
プルート[川] - 910 km
セレト[川] - 726 km

フツーリシュチナは、その豊かな自然と独特の文化、そして激動の歴史を通じて、ウクライナの多様性を象徴する地域の一つです。

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