フブスグル湖

フブスグル湖：モンゴルの秘境

フブスグル湖は、モンゴル北西部に位置する広大な淡水湖で、その美しさから「フブスグル海」や「海の母」とも呼ばれています。モンゴル最大の貯水量を誇り、面積は国内第2位です。この湖は、かつてモンゴル海軍が活動していた場所としても知られています。

地理

フブスグル湖は、ロシアとの国境に近い東サヤン山脈の麓に位置し、標高1,645メートルにあります。南北に細長い形状で、長さは約136キロメートル、幅は約36.5キロメートル、最大水深は262メートルに達します。アジア有数の水量を誇り、モンゴルの淡水資源の約70％、全世界の淡水の約0.4％がここにあります。湖はフブスグル県の北部に位置し、南端には交通と通信の中心地であるハトガルの町があります。

集水域は比較的小さく、流入する川は96本ありますが、それらは短く小規模です。一方、湖から流れ出る川は、南端から発するエギーン川のみで、セレンゲ川を経てロシア領に入り、バイカル湖に注いでいます。フブスグル湖は、シベリアカラマツを主とするシベリアのタイガ（針葉樹林帯）の南端を形成しています。

湖は山々に囲まれており、特に北側に位置するサヤン山脈の最高峰、ムンフ・サリダグ山は、モンゴルとロシアの国境を跨いで聳え立っています。

冬には湖面が完全に凍結し、かつては氷上をトラックが通行していましたが、事故や水質汚染の懸念から現在は禁止されています。

生態系

フブスグル湖は、約200万年から500万年前に地溝によって形成されたと考えられている古代湖の一つです。水質は非常に良く、そのまま飲用できるほどです。乾燥した気候と塩湖が多い草原地帯において、フブスグル湖のような清浄な淡水湖は、地元の人々にとって神聖な存在とされてきました。

湖は極貧栄養湖に分類され、リンや窒素などの栄養塩類が非常に少ないため、透明度が平均18メートル以上と非常に高くなっています。そのため、バイカル湖などと比較して魚の種類は少ないです。

生息する魚には、ヨーロピアンパーチ、カワメンタイ、コクチマス、そして固有種のフブスグル・グレイリングなどがいます。特にフブスグル・グレイリングは、産卵期の密漁によって絶滅の危機に瀕しています。

湖一帯は国立公園に指定され、中央アジアのステップとシベリアのタイガの移行帯として厳重に保護されています。しかし、密漁や刺し網漁業などの問題が後を絶ちません。国立公園には、ユキヒョウ、アイベックス、ジャコウジカ、ヘラジカ、トナカイ、アカシカ、ヒグマ、アルガリ、オオカミ、クズリ、クロテンなど、多様な野生生物が生息しています。一方で、過放牧による砂漠化や、永久凍土の溶解による湖面上昇などの問題も発生しています。

フブスグル長期生態学研究サイトでは、1997年の設立以来、様々な分野にわたる生態学研究が行われています。この研究サイトは、国際長期生態学研究ネットワークに属しており、モンゴルの生態学的な基盤の研究に貢献しています。また、気候変動や湖周辺の環境が直面する生態学的危機に対する持続可能な対応策を研究しています。

2022年には、ユネスコの生物圏保護区に指定されました。

語源

フブスグルという名前は、テュルク諸語で「青い水」を意味し、ノールはモンゴル語で「湖」を意味します。湖のラテン文字表記には、「Khövsgöl」の他にも、「Hubsugul」や「Khubsugul」など、様々な表記方法があります。

フブスグル湖は、その美しい景観と豊かな生態系が評価され、モンゴルを代表する自然遺産として、世界中の人々を魅了し続けています。

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