フランシスコ・デ・パウラ・サンタンデル

フランシスコ・デ・パウラ・サンタンデール：コロンビア独立の英雄、初代大統領

フランシスコ・デ・パウラ・サンタンデール（1792年4月2日 - 1840年5月6日）は、コロンビアの軍人であり政治家です。ラテンアメリカの独立運動において重要な役割を果たし、コロンビアの初代大統領（1832年 - 1837年）を務めました。

生い立ちと独立運動への参加

1792年、サンタンデールはコロンビアのククタで、裕福なクリオーリョの家庭に生まれました。父はカカオのプランテーションを経営していました。13歳でボゴタに留学し、法学を学びました。1810年7月20日、コロンビアがアントニオ・ナリーニョの下で独立を宣言すると、サンタンデールは独立運動に身を投じ、同年10月26日に軍に入隊し、少尉に任官しました。

カサナレでのスペイン軍との戦いを経て、ベネズエラのアプーレに逃れました。コロンビアとベネズエラの国境地帯でジャネーロの指導者として名を知られるようになり、シモン・ボリバルと出会い、その部下となりました。1813年以降、ボリバルの下で頭角を現し、1818年には准将に昇進。「勝利を組織した男」と称されました。

副大統領就任とボリバルとの対立

1819年8月7日のボヤカの戦いでスペイン軍に勝利し、コロンビアの解放に貢献しました。1821年11月3日には、大コロンビアの副大統領に就任。ボリバルの南米解放闘争を支援しましたが、次第に政治的な意見の相違が表面化します。連邦制を支持するサンタンデールは、中央集権制を採るボリバルと対立。1826年には、大コロンビアからのベネズエラの分離を画策するホセ・アントニオ・パエスとの対立も生じました。

ボリバルはサンタンデルに全権を与えて反乱に備えましたが、後にパエスに恩赦を与えたことから、サンタンデルとの関係は決裂。サンタンデルは副大統領を辞任しました。同年3月にはペルーでサンタンデル派のコロンビア軍が反乱を起こすなど、情勢は不安定化しました。

1828年4月に開催されたオカーニャ会議では、大コロンビアの維持と中央集権制の強化を図るボリバル派に対し、サンタンデル派が勢力を増し、両派の対立は激化。会議は紛糾の末に閉幕しました。

ボリバル暗殺未遂事件と亡命

1828年8月27日、ボリバルが事実上のクーデターで終身大統領に就任すると、サンタンデルは解任され、駐アメリカ大使に任命されました。これを受けて連邦派の不満が高まり、サンタンデルは反ボリバル・クーデターを計画。しかし、9月25日にはサンタンデル派によるボリバル暗殺未遂事件が発生しました。ボリバルは愛人の機転で難を逃れましたが、事件に関与したとしてサンタンデルも死刑を宣告されます。しかし、サンタンデルが暗殺の謀議に参加した証拠はなく、ボリバルの暗殺に反対していた事実が判明したため、国外追放に減刑され、フランスへ亡命しました。

帰国とヌエバ・グラナダ共和国大統領就任

その後、サンタンデールはイギリス、ドイツ、アメリカを転々としました。1830年にボリバルがコロンビアのサンタマルタで死去すると、ボリバル亡き後の大コロンビアではボリバル派のラファエル・ウルダネータ将軍が政権を維持していましたが、サンタンデル派の勢力拡大によりウルダネータ政権は崩壊し、ウルダネータはヨーロッパに追放されました。大コロンビアの崩壊後、コロンビアはヌエバ・グラナダ共和国として再編成されました。

1832年に帰国したサンタンデールは、ヌエバ・グラナダ共和国の初代大統領に就任。奴隷貿易の廃止、公教育の拡充、保護貿易による産業の振興など、多くの政策を実行しました。1837年に大統領職を辞し、晩年は共和国議会上院議員を務めました。1840年5月6日、ボゴタで胆石により波乱の生涯を閉じました。

評価と遺産

解放者ボリバルと対立したことで、サンタンデールの一般的な評価は必ずしも高くはありません。しかし、彼が行った政策は後世の歴史家から高く評価されています。特に教育においては、ジェレミ・ベンサムの功利主義を採用し、当時の世界でも最先端の教育改革を行いました。サンタンデールは法による支配の確立を試み、コロンビアの民主主義の礎を築いた人物として評価されています。

コロンビアの2000ペソ紙幣には、彼の肖像が使用されています。

サンタンデールの言葉

サンタンデールは、多くの名言を残しています。

「武器が汝らに独立をもたらしたなら、法が汝らに自由を与えるだろう」
「市民が畏敬すべきものは公の役職を持つ者ではなく、法のみである」
* 「我々はいかなるものの奴隷にもなるべきではない。ただ、法のみの奴隷になるべきだ」

これらの言葉は、彼の法治主義への信念と、自由を重んじる精神を物語っています。

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