フレデリック・レイトン

フレデリック・レイトン（1830-1896）は、19世紀イギリスを代表する画家、彫刻家であり、初代レイトン男爵として知られています。彼の作品は、歴史画、聖書画、そして古典的な題材を多く扱っており、精緻な描写と洗練された構図で高く評価されています。

レイトンは、ノース・ヨークシャーのスカーブラで貿易商の家に生まれました。ロンドンでの教育の後、ドイツやパリで研鑽を積み、24歳でイタリアのフィレンツェへ。ヨーロッパ屈指の美術教育機関で学んだ彼は、そこで才能を開花させました。代表作の一つである『フィレンツェの街を行進するチマブーエのマドンナ』はこの時期に制作されました。

その後、パリで活躍した彼は、アングル、ドラクロワ、コロー、ミレーなど巨匠たちと交流。1860年にロンドンに移り住むと、ラファエル前派の画家たちとも親交を深めました。詩人ロバート・ブラウニングの依頼で、妻エリザベス・バレット・ブラウニングの墓碑のデザインも手掛けたと言われています。

レイトンは1864年にロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの会員となり、1878年には会長に就任。アカデミー会長として、イギリス美術界を長きにわたって牽引しました。1877年に制作された彫刻作品『パイソンとレスリング選手』は、衰退していたイギリス彫刻界に新風を吹き込み、「ニュー・スカルプチャー」運動の幕開けを告げたと言われています。彼の絵画は、1900年のパリ万博でイギリスを代表する作品として展示され、国際的な評価を獲得しました。

数々の功績が認められ、レイトンは1878年にウィンザーで最下級勲爵士位を授与され、レジオン・ドヌール勲章も受章。1886年には準男爵位、1889年にはローマ賞とフランス学士院会員の栄誉に輝きました。そして1896年、画家として初めて貴族に叙せられ、「ストレットンのレイトン男爵」の爵位を授与されました。しかし、その喜びもつかの間、わずか一日後に狭心症で急逝しました。生涯独身であったため、レイトン男爵家はわずか一日で断絶、これは貴族として最短期間の記録と言われています。

彼のロンドンにあった邸宅は、現在レイトン・ハウス美術館として公開されています。そこには、彼の絵画作品と彫刻作品の数々が収蔵され、多くの人々に彼の芸術に触れる機会を提供しています。彼の作品は、古典的な美意識と近代的な感性を融合させた独特の様式で知られており、今もなお世界中の人々を魅了し続けています。レイトンは、絵画と彫刻の両分野で卓越した才能を発揮し、19世紀イギリス美術史に大きな足跡を残した重要な芸術家と言えるでしょう。彼の芸術への情熱、そしてその短いながらも華々しい生涯は、後世に多くのインスピレーションを与え続けています。

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