フロレアル級フリゲート

フロレアル級フリゲート：フランス海軍の多用途哨戒艦

フロレアル級フリゲートは、フランス海軍が運用する哨戒艦艇です。6隻がフランス海軍に配備され、さらにモロッコにも2隻が輸出されています。本級は、冷戦終結後の新たな安全保障環境の変化に対応するため、従来の通報艦を代替する艦艇として建造されました。低強度紛争や非対称戦争への対処能力を高める必要性から、より大型で汎用性に優れた艦艇の開発が求められたのです。

設計と建造

コスト効率を重視した設計が特徴で、商船の建造技術を積極的に取り入れています。フランス船級協会ビューロー・ベリタスの規則に準拠することで、同時期に建造されたラファイエット級フリゲートと比較して、大幅なコスト削減を実現しました。

艦型は長船尾楼型を採用し、ヘリコプターの運用に必要な甲板面積と船内容積を確保しています。艦内には、コマンド部隊25名分の待機スペースに加え、350立方メートルの物資を搭載できる能力を備えています。

航続性能の確保のため、ディーゼルエンジンによるCODAD方式（ディーゼル機関と補助機関の組み合わせ）を採用しています。SEMT ピルスティク6PA6 L280BTCディーゼルエンジン4基を搭載し、15ノットで巡航した場合、10,000海里（約1万9千キロメートル）の航続距離と50日間の連続行動が可能となっています。これは、広大な海外領土を管轄するフランス海軍にとって重要な要素です。

装備と運用能力

本級は、警備、救難、漁業監視といった従来の任務に加え、自国民や非戦闘員の救出などの非戦闘作戦への対応能力も強化されています。装備面では、前任のA69型通報艦をベースに改良が加えられていますが、予算の制約から艦対艦ミサイルは旧式の機種が搭載されています。また、対潜戦能力は限定的です。

一方で、汎用性の向上を図るため、従来の通報艦にはなかった航空運用能力が追加されました。船尾楼後部にはヘリコプター甲板が設置され、AS.332 シュペルピューマなどのヘリコプターを搭載できます。荒天時でも航空機の運用を可能にするため、フィンスタビライザーが装備され、シーステート5までの海象条件下で運用が可能です。

センサーシステムは、DRBV-21対空・対水上捜索レーダーを搭載しています。これはLバンドを利用する2次元レーダーで、対空探知距離110km、対水上探知距離80kmを誇ります。さらに、航法用レーダーはヘリコプターの着艦誘導にも使用可能です。100mm主砲の射撃指揮装置には、電子光学式のナジールシステムが採用されています。

艦名と配備

本級の艦名は全て、フランス革命暦の月名に由来しています。太平洋やインド洋のフランス領海外県・海外領土に配備されており、日本への寄港実績もあります。

まとめ

フロレアル級フリゲートは、コスト効率と汎用性を両立させた設計により、多様な任務に対応できる優れた哨戒艦です。フランス海軍の海外領土における安全保障を担う重要な艦艇として、今後もその役割を果たしていくでしょう。その設計思想や運用実績は、他国の海軍にとっても参考になる点が多く存在します。

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