ブカレスト条約 (1913年)

ブカレスト条約（1913年）：第二次バルカン戦争後の勢力図

ブカレスト条約は、1913年8月10日にブルガリア、ルーマニア、セルビア、モンテネグロ、ギリシャの間で締結された条約です。この条約は、第二次バルカン戦争の講和条約として、第一次バルカン戦争後のロンドン条約を改正する重要な意味を持っていました。

条約締結の背景

第一次バルカン戦争で領土を獲得したブルガリアは、特にギリシャとセルビアがマケドニアを獲得したことに不満を抱いていました。1913年6月、ブルガリアは旧同盟国に対して攻撃を開始しましたが、戦況はブルガリアにとって不利に進みました。ギリシャ、セルビア両軍がブルガリア領内に進軍する一方、オスマン帝国は東トラキアに進軍し、アドリアノープルを奪還しました。さらに、ルーマニアはブルガリアに侵攻し、首都ソフィア近郊まで進出しました。

孤立したブルガリアは停戦に合意し、ルーマニアの首都ブカレストでの和平交渉に参加せざるを得なくなりました。会議では、国境線の是正など重要な取り決めが話し合われ、各国代表団によって批准されました。

条約の内容

第二次バルカン戦争に参戦していなかったオスマン帝国は、この条約には参加せず、代わりにブルガリア、ギリシャとの間で二国間条約（コンスタンティノープル条約、アテネ条約）を締結しました。

領土の再配分

セルビア：ヴァルダル川とストルマ川の間の分水界に沿って東側の国境線が引かれ、オフリド、モナスティルなどヴァルダル・マケドニアの中部と、ノヴィ・パザルのサンジャクの東半分を獲得しました。これにより、セルビアの国土は48,300k㎡から87,780k㎡に拡大し、人口も150万人増加しました。
ギリシャ：ベラシツァ山頂とメスタ川（ネストス川）河口の間に国境線が引かれ、イピロスやテッサロニキのあるマケドニアの大部分を獲得しました。ギリシャの面積は64,790k㎡から108,610k㎡に増え、人口も2,660,000人から4,363,000人に増加しました。カヴァラよりもさらに東側がギリシャ領となり、ブルガリアのエーゲ海沿岸は、デデアーチ（現在のアレクサンドルーポリ）周辺の110kmのみとなりました。
ブルガリア：第一次バルカン戦争で獲得した領土は縮小しましたが、ピリン・マケドニアとしてマケドニアの一部、ストルミツァや西トラキアを有する地域が割り当てられ、110kmのエーゲ海岸も領有しました。増加した面積は約25,030k㎡、人口は129,490人でした。また、ブルガリアは既存の要塞を解体し、ルセとシュメンの間、バルチクから半径20km以内には要塞を建設しないことに合意しました。
ルーマニア：ドナウ川から黒海までの南ドブロジャをブルガリアから割譲されました。この地域の面積は約6,960k㎡、人口は286,000人に及び、シリストラの要塞、ドナウ川沿いのトゥトラカン、黒海沿いのバルチクが含まれます。
* モンテネグロ：ベラネ、イペク（ペヤ）、ジャコヴァなどが領土となりました。

条約の影響

領土拡大を期待してバルカン戦争に参加したブルガリアは、結果として厳しい条件を受け入れることになりました。獲得した領土は比較的小さく、ブルガリア人人口の多いマケドニアの獲得には失敗しました。特にオフリドやビトラといった重要な拠点を失ったことは大きな痛手でした。また、エーゲ海沿岸もわずかな部分しか獲得できず、ブルガリアがバルカン地域の主導権を握るという構想は頓挫しました。

一方、ギリシャはテッサロニキやカヴァラの港を含むマケドニアの大部分を獲得し、領土拡大においては成功を収めました。しかし、北イピロスの領有をイタリアが反対するなど、課題も残りました。

ルーマニアは第二次バルカン戦争への介入とブカレスト条約の締結により、東南ヨーロッパにおける主導的な地位を確立しました。南ドブロジャを獲得したほか、バルカン半島のヴラフ人の問題を提起し、その保護を近隣諸国に保証させました。

ブカレスト条約は、バルカン半島の勢力図を大きく塗り替えるとともに、その後のヨーロッパ情勢に大きな影響を与えることとなりました。

列強の反応

ヨーロッパの列強の関心は薄かったものの、ドイツ、オーストリア＝ハンガリー帝国、ロシアでは好ましく受け止められず、イギリスやフランスはバルカン半島の「時代が到来」したと評価するなど、反応は分かれました。当初列強がブカレスト条約を改正する案もありましたが、放棄されました。

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