ブラバム・BT56

ブラバム・BT56 (Brabham BT56)

ブラバム・BT56は、1987年のF1世界選手権に参戦するためにブラバムが開発したフォーミュラ1カーです。デザインはジョン・ボールドウィンとセルジオ・リンランドによって手掛けられました。チームは前年のBT55からの課題を克服するため、より伝統的な設計を採用しました。

背景と開発

1986年のF1シーズンはブラバムにとって厳しいものでした。BT55は期待に反して低いパフォーマンスを強いられ、チームはシーズンの終わりに失望感を味わいました。このような状況を打破すべく、BT56が設計されました。BT56は、ブラバムが1972年および1973年シーズンに使用していたBT37以来、ゴードン・マレー以外のデザイナーによって設計された車両となりました。マレーはマクラーレンに移籍しており、BT56は新たな挑戦を求めるものでした。

1986年シーズンの終わりに、主力スポンサーが撤退し、かつてハース・ローラの開発を支えていた会社FORCEを手に入れたブラバムは、ハース・ローラが使用していたフォードのターボエンジンの獲得を試みました。しかし、フォードは先にベネトンと契約を結んでしまい、最終的にはBMWエンジンへの依存が続くことになります。

エンジンとシャシーの問題

BT56には、前モデルBT55と同じ直列4気筒のBMW・M12/13/1エンジンが搭載されました。このエンジンは72度傾けられており、効率を重視して設計されています。しかし、チームは古いBMWエンジンに戻したいと考えていましたが、BMW側がそれを許可しなかったため、その願いは叶いませんでした。BT56はブラバムが最後にターボエンジンを搭載したモデルとなります。

前モデルのBT55と同じエンジンとギアボックスを使用したため、BT56はBT55から引き継いだ複数の技術的な問題を抱えていました。特に「エンジンオイルの循環不良」や「リアシャシーの剛性不足」は厳しい信頼性の問題を引き起こしました。その結果、アンドレア・デ・チェザリスはシーズン中に14回もリタイヤし、リカルド・パトレーゼに至っても9回のリタイヤを余儀なくされました。また、ピレリが撤退したことで、チームはタイヤ供給をグッドイヤーに変更しました。

1987年シーズン

1987年のシーズンでは、デ・チェザリスが第3戦ベルギーGPで3位に入り、パトレーゼも第14戦メキシコGPで3位を獲得しました。この2台のポイントでチームは合計10ポイントを獲得し、コンストラクターズランキングでは8位でシーズンを終えました。さらに、最終戦ではナイジェル・マンセルの代役としてステファノ・モデナを起用し、彼はBT56でF1にデビューしました。

余波とチームの移行

1987年シーズンを終えた後、ブラバムは競争力のある自然吸気エンジンを確保できなかったため、1988年は参戦を休止することを決定します。その後、バーニー・エクレストンはチームを売却し、1988年にアルファロメオが新たなオーナーとなります。チームは新体制のもとで1989年に復帰しましたが、その過程で多くの困難が伴ったことは言うまでもありません。

ブラバム・BT56は、F1の歴史の中で特異な位置を占めるマシンの一つとして記憶されることでしょう。

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