ブラーフーイー語

ブラーフーイー語

ブラーフーイー語（またはブラーフイー語、 بروہی brāhūī）は、南アジアから西アジアにかけて分布するドラヴィダ語族の中でも、北部ドラヴィダ語派に分類される言語の一つです。

分布と話者

この言語は、主にパキスタンのバローチスターン州北東部や、アフガニスタンのカンダハール州南部で話されています。また、イランの一部にも少数の話者がいると言われています。

ドラヴィダ語族に属する言語の話者の大多数はインド南部に集中していますが、ブラーフーイー語の話者は地理的に遠く離れたパキスタン西部を中心とした地域に居住しています。この主要な分布地域の他にも、パキスタンの大都市であるカラチや、カラート、ハイデラバードなどにも話者が確認されています。

話者数の正確な把握は困難を伴います。これは、多くの話者が居住地域で優勢な言語、特にバローチー語をはじめとするインド・ヨーロッパ語族のイラン系諸言語などとの多重言語話者であるためです。エスノローグによる推定では約240万人とされていますが、この数字には第二言語話者が多く含まれていると考えられており、母語話者の数は約30万人程度と推定されています。

言語的特徴

ブラーフーイー語は、他のドラヴィダ諸言語とは異なる際立った特徴を持っています。これは、多数の話者が周辺で広く話されるイラン系言語（バローチー語やペルシア語など）やアラビア語との接触が多いためです。

特に、周辺言語からの強い影響により、語彙の大量借用が見られます。イラン系言語やアラビア語起源の単語が多く取り入れられています。さらに、語彙だけでなく、文法構造にもこれらの言語からの影響が及んでいることが指摘されています。

音韻

ブラーフーイー語の母音体系には、長短の区別があります。短母音として /a, i, u/ が、長母音として /aː, eː, iː, oː, uː/ が存在します。また、二重母音として /aɪ, aʊ/ が確認されています。

書記体系

ブラーフーイー語の話者の多くがイスラム教徒であるため、伝統的にアラビア文字が書記に用いられてきました。ドラヴィダ語族の中で、インドで一般的なブラーフミー系文字ではなくアラビア文字を使用するのはブラーフーイー語のみという、書記体系における珍しい特徴を持っています。元々は口頭でのみ用いられる言語でしたが、20世紀後半になってアラビア文字での書記が始まりました。パキスタン、アフガニスタン、イランといった話者地域では、主にナスタアリーク体で書かれます。

近年では、アラビア文字に加え、ラテン文字による正書法も開発されています。バローチスタン大学のブラーフーイー語部門が開発した「Brolikva」と呼ばれるラテン文字正書法があり、現地の新聞「タラール」などで採用されています。新しく整備されている「Bráhuí Báşágal Brolikva」正書法も存在します。

このラテン文字表記では、ダイアクリティカルマーク（発音区別符号）が付加された文字を用いることで、長母音や、後部歯茎音、反り舌音、有声軟口蓋摩擦音、無声歯茎側面摩擦音といったブラーフーイー語の特定の音を正確に表現しようとしています。

書記化の歴史が比較的浅いため、他の多くのドラヴィダ語に見られるような長い伝統を持つ固有の文学は、現在のところ十分に発達していません。

方言

ブラーフーイー語にはいくつかの方言が存在するとされており、Sarawan方言、Kalat方言、Jharawan方言などが知られています。

言語名別称

ブラーフイー語
ブラーフーイ語
ブラーフィー語
Birahui
Brahuidi
Brahuigi
Kur Galli
Brahuiki
Brahudi

関連事項

ドラヴィダ語族
* バローチー語

（エスノローグの言語コードは `brh` です。）

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