ブルー・ムーン (1934年の曲)

ブルー・ムーン (Blue Moon)

「ブルー・ムーン」は、ロレンツ・ハート（作詞）とリチャード・ロジャース（作曲）によって1934年に発表された楽曲です。作詞・作曲の黄金コンビが生み出した数々の名曲の中でも、ブロードウェイ・ショーやハリウッド映画とは無関係にヒットした、珍しい作品として知られています。

誕生秘話

この曲は、元々MGM映画『ハリウッド・レヴュー・オヴ・1933』のために「プレイヤー（Prayer → 願いごと）」というタイトルで書かれました。ジーン・ハーロウが歌う予定でしたが、制作側の都合により、ハーロウの出演も楽曲の使用も見送られることになります。

その後、『男の世界』という映画のタイトル曲として再び日の目を見るチャンスが訪れます。しかし、公開直前に映画タイトルが『ザ・バッド・イン・エヴリ・マン（The Bad in Every Man）』に変更されたことに伴い、楽曲もシャーリー・ロスによって歌われました。

転機が訪れたのは、楽譜出版者のジャック・ロビンソンから「もっと商業的な歌詞を」という提案があったことです。ロレンツ・ハートが新たに歌詞を書き下ろし、「ブルー・ムーン」として生まれ変わったこの曲は、瞬く間に人気を集め、楽譜はミリオンセラーを記録する大ヒットとなりました。

楽曲の特徴と評価

「ブルー・ムーン」のコード進行は、ポピュラー音楽でよく用いられる循環コード「I-VI-IV-V（C-Am-F-G）」で構成されています。シンプルながらも美しいメロディーは、多くの人々を魅了し続けています。

作詞を担当したロレンツ・ハートは、シニカルな視点からこの曲を捉えていたため、あまり気に入っていなかったと伝えられています。しかし、結果的には彼の作品の中で最も人気のある楽曲の一つとなりました。一方で、シンプルな構成であるため、音楽評論家からの評価は必ずしも高くはありません。

多彩なカバーバージョン

「ブルー・ムーン」は、数多くのアーティストによってカバーされています。オリジナルはスローテンポなバラードですが、1961年にドゥーワップグループのザ・マーセルズが発表した、スキャットを取り入れたロックンロールバージョンが大ヒットしました。この成功以降、アップテンポなカバーも一般的になりました。

映画での使用例も多く、『狼男アメリカン』（1981年）では、ボビー・ヴィントン、ザ・マーセルズ、サム・クックによる3つの異なるバージョンが効果的に使用されています。また、『ベイブ』（1995年）では、ネズミたちが歌うシーンで使用され、話題となりました。

その他、マンチェスター・シティFCのアンセムとしても親しまれています。

主な録音アーティスト

ジャズ

ビリー・エクスタイン
ビリー・ホリデイ
メル・トーメ
エラ・フィッツジェラルド
オスカー・ピーターソン

ポップス

エルヴィス・プレスリー
マーセルズ
Herb Lance & The Classics
ディーン・マーティン
ボブ・ディラン
パーシー・フェイス・オーケストラ
サム・クック
ボビー・ヴィントン

日本人歌手

松平晃 - 訳詞：服部竜太郎
灰田勝彦 - 訳詞：永田哲夫
柳ジョージ

「ブルー・ムーン」は、時代を超えて愛される不朽の名曲として、これからも人々の心に響き続けるでしょう。

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