ブーゲンヴィル級通報艦

ブーゲンヴィル級通報艦：フランス植民地帝国の海の守護者

第二次世界大戦前、フランス海軍は広大な植民地帝国の維持・管理のため、強力な通報艦を必要としていました。そのニーズに応えるべく建造されたのが、ブーゲンヴィル級通報艦です。本記事では、この艦級の設計思想から艦型、武装、そして同型艦まで、詳細に解説します。

通報艦の役割とブーゲンヴィル級の誕生

[通報艦]]には大きく分けて二つの役割がありました。一つは艦隊に随伴し、敵艦隊の情報を伝達する艦隊通報艦です。しかし、この役割は駆逐艦が担うようになり、重要性は低下しました。もう一つは、本国と植民地間の航路警備や現地での治安維持を行う植民地通報艦です。イギリス海軍ではスループが、フランス海軍では独自の[[通報艦]がその役割を担っていました。

第一次世界大戦後、老朽化した既存の通報艦を代替するため、1927年にブーゲンヴィル級の建造が承認されました。この建造計画は、ワシントン海軍軍縮条約の制約を巧みに回避するものでした。基準排水量は軽巡洋艦を下回る2,000トン台に抑えつつ、主砲にはイギリス海軍の同型艦より強力な13.8cm砲を採用しました。これにより、軽巡洋艦の枠に収まりながら、高い戦闘能力を確保しました。

優れた航続性能と近代的な装備

ブーゲンヴィル級の設計は、従来の商船型から軍艦型へと大きく転換しました。これにより、外洋での航行性能と生存性が大幅に向上しました。また、燃費の良いスルザー社製ディーゼル機関の採用により、巡洋艦に匹敵する航続性能を実現しました。さらに、居住区画の空調設備を強化することで、極寒の大西洋から酷暑の赤道直下まで、あらゆる気候帯での運用を可能にしました。

当時発展著しかった航空機技術にも着目し、艦載水上機を1機搭載しました。これにより、既存の砲艦を凌駕する索敵能力と、無線封鎖状態下でも情報伝達を行う能力を獲得しました。

1927年度計画で2隻の建造が開始され、1938年度計画までに10隻の建造が承認されましたが、戦時中の混乱により7隻が竣工し、3隻は未完成に終わりました。

艦型と武装

ブーゲンヴィル級は、艦首乾舷の高い短単船首楼型船体を持ち、優れた凌波性を誇っていました。艦首には13.8cm速射砲を2基搭載し、その後ろに艦橋とマストが配置されていました。フライングデッキは後部主砲付近まで伸びており、艦上の作業スペースを広く確保していました。

2本の煙突の周囲は艦載艇置き場となっており、グースネック式クレーンで艦載艇を揚収しました。2番煙突と後檣の間には水上機が格納され、クレーンによって運用されました。カタパルトは搭載されていませんでした。後部マストの後方には3番主砲が後向きに1基配置され、艦尾には機雷投下用のレールが備え付けられていました。

主砲は13.8cm速射砲で、40.6kgの砲弾を16,600mまで射程距離に届かせました。対空兵装として37mm機関砲4基と13.2mm機銃6基を搭載し、近接防空能力も強化しました。また、機雷50発を搭載して港湾閉鎖や航路封鎖も行えるように設計されていました。

同型艦

ブーゲンヴィル級通報艦の同型艦は以下の通りです。

ブーゲンヴィル (Bougainville)
デュモン・デュルヴィル (Dumont-d'Urville)
サヴォルニアン・ド・ブラザ (Savorgnan-de-Brazza)
ダントルカストー (D'Entrecasteaux)
リゴー・ド・ジュヌイー (Rigault de Genouilly)
アミラル・シャルネ (Amiral Charner)
ディベルヴィル (D'Iberville)
ラ・グランディエール (La Grandière)
ボータン・ボープレ (Beautemps-Beaupré)
ラ・ペルーズ (La Pérouse) - 建造中止

ブーゲンヴィル級の影響

ブーゲンヴィル級の設計思想は、同時代の他の海軍にも大きな影響を与えました。イタリア海軍のエリトリア級植民地警備艦、ポルトガル海軍のアフォンソ・デ・アルブケルケ級通報艦、オランダ海軍のファン・キンスベルゲンなどは、ブーゲンヴィル級との類似点を指摘されています。

結論

ブーゲンヴィル級通報艦は、フランス海軍がその広大な植民地帝国を守るために建造した、優れた艦級でした。その設計思想、艦型、武装は、後の海軍設計にも影響を与え、フランス海軍史において重要な地位を占めています。本記事が、ブーゲンヴィル級通報艦への理解を深める一助となれば幸いです。

もう一度検索