プロキシマ・ケンタウリc

プロキシマ・ケンタウリcは、ケンタウルス座の方向に位置する恒星プロキシマ・ケンタウリを周回する太陽系外惑星です。地球からの距離は約4.2光年と、比較的近い場所にあります。

発見の経緯

プロキシマ・ケンタウリの周りには、2016年にプロキシマ・ケンタウリbが発見されていましたが、プロキシマ・ケンタウリcの存在が示唆されたのは2019年4月のことです。高精度視線速度系外惑星探査装置(HARPS)による観測で、プロキシマ・ケンタウリbよりも外側を公転する第2の惑星の可能性が浮上しました。

その後、2020年にハッブル宇宙望遠鏡の過去の観測データ解析により、プロキシマ・ケンタウリcの存在が確認されたと報告されました。また、イタリア国立天体物理学研究所(INAF)のチームは、プロキシマ・ケンタウリcを直接撮影したとされる画像を公開しました。

特性

プロキシマ・ケンタウリcは、ハッブル宇宙望遠鏡の約25年間にわたる観測データから、軌道傾斜角や真の質量が算出されています。質量は地球の約7倍であり、スーパーアースと呼ばれる岩石惑星に分類される可能性があります。

プロキシマ・ケンタウリからの軌道長半径は約1.48天文単位（約2億2140万km）で、これは太陽系の火星軌道に匹敵します。公転周期は1,928日、表面温度は-234℃と非常に低温です。TESSによる観測では、プロキシマ・ケンタウリ系の惑星はトランジット（主星面通過）を起こす可能性が低いとされており、プロキシマ・ケンタウリcに至ってはトランジットの可能性はほぼ無視できるほどです。このため、実際の半径を求めることは難しいと考えられています。

プロキシマ・ケンタウリcは主星から遠く離れた軌道を公転しているため、地球からの見かけの距離は最大1.14 ± 0.06秒角と比較的大きく、太陽系外惑星の直接観測の有望なターゲットになると期待されています。

環の存在の可能性

プロキシマ・ケンタウリcの観測結果は、当初の予想よりも明るく、これは惑星の周囲に塵円盤や巨大な環が存在することを示唆しています。もし、惑星本体のみが光を反射していると仮定すると、その惑星は木星の5倍という巨大なサイズになってしまいます。プロキシマ・ケンタウリcは土星よりも小さい惑星ですが、環が存在するならば、土星の環よりも大きいと考えられています。環の存在を確定するためには、高精度の望遠鏡による観測が必要となります。

しかし、一部の天文学者はこの環の存在に懐疑的です。

存在に対する疑問

プロキシマ・ケンタウリcの存在については、いくつかの疑問が提示されています。

スーパーアースは、水が氷として存在できるスノーライン付近で形成されると考えられていますが、プロキシマ・ケンタウリcはスノーラインから離れており、その形成過程に疑問が残ります。もし、プロキシマ・ケンタウリcの存在が確定すれば、従来のスーパーアース形成理論を覆す発見となり、重要な研究テーマとなるでしょう。

また、[プロキシマ・ケンタウリ]]cは[[ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡]の観測ターゲットにもなっていますが、検出できない可能性も指摘されています。

プロキシマ・ケンタウリcの存在を検証するためには、HARPSや欧州宇宙機関の宇宙望遠鏡ガイアによる追加の観測と測定が必要です。発見チームの一員であるDel Sordo氏は、プロキシマ・ケンタウリcがプロキシマ・ケンタウリ系のさらなる観測、特に直接観測の機会を与えてくれるだろうと述べています。

2020年4月には、超大型望遠鏡VLTに搭載されたSPHEREによる観測で、プロキシマ・ケンタウリcが存在すると予測される位置に、天体のような光が19個撮影されました。そのうちの一つは、ノイズや背景の恒星とは異なる可能性が高く、惑星である可能性が指摘されています。この光が惑星である場合、プロキシマ・ケンタウリcは地球の約7倍の質量を持つミニ・ネプチューンである可能性が示唆されました。

しかし、この光がデータ上のノイズである可能性も高く、決定的な発見とするにはさらなる観測が必要とされていました。しかし、COVID-19のパンデミックにより、追加の観測は一時的に中断されています。

その後、一時的に存在が確実視されましたが、2022年7月の研究報告では、プロキシマ・ケンタウリcの存在に対する懐疑的な意見が再び示されました。この報告を受け、太陽系外惑星エンサイクロペディアでは、プロキシマ・ケンタウリcの現況を「Controversial（論争あり）」に格下げし、確認済みの太陽系外惑星リストから削除されました。

現在もプロキシマ・ケンタウリcに関する研究は続いており、その存在が確定するかどうか、今後の観測結果が注目されます。

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