プーシャン

プーシャン - インド神話の太陽神

プーシャン（サンスクリット: Pūṣan）は、インド神話における重要な太陽神の一つです。彼は道祖神や家畜、動物の守護者として広く尊敬され、神話の中で多様な役割を果たしています。プーシャンは太陽神スーリヤの娘であるスーリヤーを妃とし、山羊が引く車に乗る姿が描かれています。また、彼の主食は粥であることでも知られています。

プーシャンの神聖性と役割

『リグ・ヴェーダ』では、プーシャンは8篇の独立した讃歌を持ち、インドラ神やソーマとそれぞれ1篇ずつの共通の讃歌を持つことで、彼の神聖な地位が確認できます。彼は陽光の持つ万物を育む力や全てを見渡す力を神格化した存在であり、その特性は特に道祖神や牧畜神としての性格に顕著に表れています。

プーシャンは太陽神スーリヤの使者として、すべての道に精通した存在であり、人間の良き案内者と見なされています。彼はまた、全てを監視し、人間や家畜の保護者としての役割を担っていることから、失われた財産や家畜を回復する力も持つとされています。プーシャンは結婚とも密接に関連付けられており、これは人々が良き指導者に恵まれることを祈願しているからだと考えられています。

死者を導く役割

さらに、プーシャンは死者を天の祖霊のもとに導く存在としても知られています。このように、彼はただの太陽神という枠を超えた多面的な性格を持っており、信仰の中で重要な役割を果たしています。また、カースト制度においても、非アーリア系のシュードラと結びつけられることがあります。

神話におけるプーシャン

神話においては、プーシャンはダクシャの祭祀に関連しており、彼の身体が毀損される出来事が記されています。具体的には、シヴァ神（ルドラ）から手痛い被害を受けることになります。この際、シヴァはダクシャの祭祀を混乱させ、サヴィトリの両腕を切り落とし、バガの両眼をえぐり、プーシャンの歯を折ったとされています。この物語は、神々の関係や祭祀の重要性を暗示するものでもあります。

後世の位置づけ

後世において、プーシャンはアーディティヤ神群の一つとして位置付けられています。彼の神聖性や役割は、古代から現在まで受け継がれ、多くの人々に信仰されてきました。プーシャンは太陽の明るさと道を示す存在として、今なお神話の中で生き続けています。

参考文献

• - 『リグ・ヴェーダ讃歌』 辻直四郎訳、岩波文庫（1978年）
• - 『インド神話伝説辞典』菅沼晃編、東京堂出版（1985年）
• - 『デュメジル・コレクションＩ』丸山静、前田耕作編、ちくま学芸文庫（2001年）
• - 『デュメジル・コレクションIII』丸山静、前田耕作編、ちくま学芸文庫（2001年）

もう一度検索