ヘレラサウルス

ヘレラサウルス（Herrerasaurus）

ヘレラサウルスは、アルゼンチンのイスチグアラスト層から発見された後期三畳紀に生息した肉食恐竜で、最大全長は6メートル、平均体重は350キログラムです。この恐竜は2020年時点で最も古い大型肉食恐竜とされ、その肉食性には疑いがありません。しかし、身体の構造には獣脚類らしからぬ特徴も多く、ヘレラサウルス科は獣脚類に分類されるべきかどうかは議論の余地が残されています。学名は「ヘレラのトカゲ」という意味で、これは発見者のVictorino Herreraに由来しています。

古生物学

ヘレラサウルスは二足歩行の肉食性恐竜で、全長は最大で6メートル、体重は約350キログラムに達しました。この属はヘレラサウルス科を代表し、スタウリコサウルスやサンユアンサウルス、グナトヴォラクスと比較しても大きな体躯を誇ります。三畳紀後期のカーニアン期において、ヘレラサウルスは強力な捕食者としての地位を築いていましたが、やがてコエロフィシスなどの真正獣脚類にその地位を奪われました。当時、リンコサウルス類などの四肢動物が衰退していたことから、生態系に何かの変化があったと考えられています。

頭部の構造

ヘレラサウルスの頭骨は長方形で、特徴的な前上顎骨と控えめな前眼窩窓を持っています。下顎には南米の爬虫類に見られる特殊な関節が存在し、上顎からは犬歯のような長大な歯が数本生えています。また、歯骨の下部には唇の痕跡が確認されており、捕食者としての特性が強調されています。頭部の横幅は狭く、ティラノサウルスのような優れた立体視野はなく、獲物の捉え方において他の肉食恐竜と比べて有利とは言えませんでした。

四肢の特徴

前肢には5本の指があり、第一から第三指には鉤爪が見られますが、第四指と第五指はほとんど退化しています。このような指の形状は、ジュラ紀や白亜紀の恐竜とは異なり、第二指よりも第三指が長いという特徴があります。このことは、四足歩行の名残であると考えられています。後半肢については、大腿骨が脛より長いため、オルニトミムスなどの後の恐竜に比べると走行性能は劣っていたでしょう。しかし、三畳紀の環境においては十分な敏捷性を持っていたとされています。

胴体と尻尾

ヘレラサウルスは骨化腱が発達しておらず、その結果、尻尾の柔軟性は非常に高いものでした。後のテタヌラ下目の恐竜たちと比べると、もっとしなやかな動きをしていたと考えられます。

古生態学

糞化石や胃内容物の分析から、ヘレラサウルスの主な食材にはリンコサウルス類のヒペロダペドンやディキノドン類のイスチグアラスティアが含まれていたことが示されています。また、エオラプトルという他の恐竜とも共生していた可能性がありますが、比較的体格が小さいため、ヘレラサウルスにとっては獲物となっていたかもしれません。

競合相手

イスチグアラスト層には多様な肉食動物が存在し、競合を避けることが難しかったでしょう。特に、現生のワニに近いクルロタルシ類が大きな脅威となり、彼らは他の恐竜やリンコサウルス類を餌食にしていました。ヘレラサウルスは、その敏捷さを活かしてこのような巨大捕食者との棲み分けを行っていたと考えられています。さらに、キノドン類ともニッチの競争をしていたとされ、ただヘレラサウルスがキノドン類を獲物として狙っていた可能性もあります。

分類と関連種

ヘレラサウルスは非常に原始的な特徴を有しているため、分類は難しいものとなっています。原始的な獣脚類とされることが多いですが、他の研究では竜脚形類との近縁性も指摘されています。それでも、現在までに確認されているのは一種のみ（H. ischigualastensis）です。シノニムにはフレングエリサウルスが含まれますが、これも現在は異なる解釈が存在しています。

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