ヘンリー・W・スローカム

ヘンリー・ワーナー・スローカムの生涯

ヘンリー・ワーナー・スローカム（1827年9月24日 - 1894年4月14日）は、南北戦争における北軍の将軍であり、その後、ニューヨーク州選出のアメリカ合衆国下院議員を務めました。南北戦争中、彼は軍隊で最も若い少将の一人となり、東部戦線やジョージア州、両カロライナ州など、多くの重要な戦闘に参加しました。しかし、ゲティスバーグの戦いでの優柔不断な行動から「スロー・カム（緩り来る）」という皮肉な渾名で呼ばれることもありました。

生い立ちと初期の経歴

スローカムはニューヨーク州オノンダガ郡デルファイで生まれました。カズノビア神学校で学んだ後、教師となりました。その後、ウェストポイント陸軍士官学校に入学し、ルームメイトのフィリップ・シェリダンよりも優秀な成績を収めました。1852年7月1日、第1アメリカ砲兵連隊の少尉に任官。フロリダ州でのセミノール戦争に従軍し、サウスカロライナ州チャールストン港のムールトリー砦で勤務しました。1854年にクララ・ライスと結婚し、1855年3月3日には中尉に昇進しましたが、1856年10月31日に除隊し、ニューヨーク州シラキュースに移りました。

スローカムは、陸軍での守備任務に飽きた際に法律を学び、1858年に弁護士として認められました。シラキュースで開業し、郡財務官を務めた後、1859年にはニューヨーク州議会下院議員に選出されました。この間、彼は大佐の階級でニューヨーク民兵隊の砲兵教官も務めていました。

南北戦争

初期の指揮
南北戦争が勃発すると、スローカムはニューヨーク州エルマイラで招集された第27ニューヨーク歩兵連隊の大佐に指名されました。第一次ブルランの戦いでは、デイビッド・ハンター少将の師団に所属する連隊を率い、自身も太腿を負傷しました。1861年8月には志願兵の准将に昇進し、半島方面作戦では、ウィリアム・B・フランクリン少将の第1師団で第2旅団を、七日間の戦いでは第6軍団第1師団を指揮し、ゲインズミルの戦いで頭角を現しました。

1862年7月25日、スローカムは志願兵の少将に指名され、陸軍で2番目に若い記録となりました。第二次ブルランの戦い後には、自身の第1師団を率いてジョン・ポープ少将の退却を支援しました。サウス山の戦いでは、軍団指揮官ウィリアム・B・フランクリン少将の優柔不断を無視し、敵前線を攻撃し潰走させました。1862年10月20日、アンティータムの戦いで戦死したジョセフ・K・マンスフィールド少将の後を継ぎ、第12軍団の指揮を執りました。スローカムは、フレデリックスバーグの戦いとチャンセラーズヴィルの戦いに参戦しましたが、特にチャンセラーズヴィルでは、46,000名の右翼全軍を指揮しました。しかし、ポトマック軍指揮官ジョセフ・フッカー少将との意見の相違から、指揮官交代を求める「徒党」の一人となりました。

スローカムは、慎重で規則通りの士官として知られていましたが、36歳という若さで少将に昇進し、部隊兵を掌握する術を身につけていました。フッカーが解任されると、スローカムは後任候補となりましたが、最終的にはミードの下で従軍することになりました。

ゲティスバーグ
ゲティスバーグの戦いでは、軍団の到着が遅れたため、「スロー・カム」という不名誉な渾名で呼ばれることになりました。第12軍団は、1863年7月1日の午前中に戦場に到着せず、午後になってハワード少将からの援軍要請を受けましたが、戦いが始まっていることに気付いていなかったと主張しました。歴史家からは、この遅延が批判され、決断力に欠けていたと指摘されています。しかし、ミードの作戦計画との関連性や、スローカムの慎重な性格が影響した可能性も指摘されています。スローカムは、戦場での上級将軍として、ミードが到着するまでの間、部隊の指揮を執りました。7月2日には、南軍の攻撃に対し、カルプスヒルの陣地を守る重要な役割を果たしました。

西部戦線
ゲティスバーグの後、第12軍団は西部戦線に派遣され、ジョセフ・フッカー少将の指揮下に入りました。スローカムはフッカーの下で働くことに不満を持ち、エイブラハム・リンカーン大統領に辞表を提出しましたが、拒否されました。妥協の結果、スローカムの指揮下の部隊は、鉄道護衛とフッカーの部隊とに分かれました。1864年夏、スローカムはビックスバーグ地区軍とテネシー方面軍の第12軍団を指揮しました。アトランタ方面作戦中にジェイムズ・マクファーソン少将が戦死すると、スローカムは第20軍団の指揮官に任命され、アトランタ占領の際、最初に市中に入りました。

シャーマンの海への進軍では、スローカムはジョージア軍の指揮を執り、左翼を担いました。カロライナ方面作戦では、アベラスバラの戦いとベントンビルの戦いで激しく交戦し、南軍の降伏後にはミシシッピ方面軍を指揮しました。1865年9月28日にアメリカ陸軍を除隊しました。

戦後の生活

スローカムは、1865年にニューヨーク州州務長官に立候補しましたが落選。その後、弁護士としての実務を再開し、1868年にアメリカ合衆国下院議員に当選し、1873年まで務めました。議会では、第二次ブルランの戦い後に軍法会議にかけられたフィッツ・ジョン・ポーター少将の免罪に尽力しました。1876年にはニューヨーク市ブルックリン区の公共事業局長に指名され、ブルックリン橋の建設など、多くの公共事業に携わりました。1882年には再度、アメリカ合衆国下院議員に選出され、1885年まで務めました。また、ニューヨーク州軍人水兵ホームの理事会議長やゲティスバーグ記念碑委員会の委員も務めました。

スローカムはブルックリン区で亡くなり、グリーンウッド墓地に埋葬されました。この墓地にはポーター将軍も埋葬されています。蒸気船ジェネラル・スローカムは、彼に因んで名付けられましたが、1904年に大火災を起こしました。ニューヨーク市スローカム砦やブルックリン区グランドアーミー広場には、彼の記念碑があります。

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