ベニマシコ

ベニマシコ（Carpodacus sibiricus）

概要

ベニマシコは、スズメ目アトリ科に属する唯一の鳥種で、その名の通り紅色を帯びた美しい姿が特徴的です。この鳥は主に日本、中国、カザフスタン、北朝鮮、韓国、ロシアに広がる生息地を持ちます。

分布

日本では、ベニマシコは特に北海道や青森県の下北半島周辺に夏鳥として訪れます。しかし冬になると、本州以南に移動し、引き続き越冬を行います。繁殖地は、低木が点在する草原や湿原のような環境で見られることが多く、4月から10月にかけて繁殖活動を行います。

生態

ベニマシコは、繁殖期には低木が生い茂る場所や湿原の中で生活し、巣を作るのが得意です。巣は椀形をしており、枯れ葉や花の穂を使用して作られます。繁殖期には5月から7月にかけて、淡い緑褐色の卵を3-4個産むことが知られています。越冬期には、丘陵や山麓の林縁や草原、河原などで生活し、10月から4月まで見かけることができます。

食性

この鳥は繁殖地で昆虫などを捕らえて食べることが多く、冬の間はイネ科やタデ科の草の実を啄むことで栄養を摂ります。さまざまな食物を利用することで、環境に適応していることがわかります。

鳴き声

ベニマシコの地鳴きは「ピッポッ」「フィー」といった簡潔な音であり、繁殖期の囀りは「フィー」「チリチィチョ」といった多様な音色で構成されています。

形態

この鳥の全長は約15 cm、翼を広げると約21 cmになります。スズメに似た大きさながら、個性的な嘴は短く丸みを帯びており、肌色を帯びています。雄は体全体が紅赤色をしており、特に羽が夏羽の時期にはより鮮やかになります。一方、雌は明るい胡桃色で、さまざまな斑点が見られます。

名称の由来

学名「Uragus sibiricus」の「Uragus」は、ギリシャ語で「後衛隊長」を意味し、「sibiricus」はシベリアに由来します。和名の「ベニ」は、この鳥の赤色に、また「マシコ」は猿子を意識して名付けられたものです。これは顔が赤いことからきており、アトリ科の他の赤い顔を持つ鳥類にも見られる名付け方です。

保全状況

日本の都道府県では、ベニマシコは滋賀県で準絶滅危惧に指定され、埼玉県では地域別危惧に指定されています。これにより、個体数の減少が懸念されています。

参考文献

1. 真木広造監修・写真『野鳥』永岡書店 (2009年)
2. 杉坂学監修『色と大きさでわかる 野鳥観察図鑑 CD付』成美堂出版 (2003年)
3. 本山賢司 絵・文　上田恵介本文監修『鳥類図鑑』東京書籍 (2006年)

関連項目

• - アトリ科
• - 日本の野鳥一覧

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