ベネズエラの歴史

ベネズエラの歴史は、先コロンブス期から現代まで、多様な文化と政治的変動を経てきました。この地は、先住民の生活、スペイン植民地支配、独立戦争、そして20世紀の石油ブームとその後の政治的転換期を経験しています。以下に、その詳細を記述します。

先コロンブス期

クリストーバル・コロンブスが到着する以前、現在のベネズエラには、カリブ族のカラカス人やテケス人、アラワク族などの先住民族が暮らしていました。これらの民族は、インカ、マヤ、アステカ文明のような高度な文明は築きませんでしたが、マラカイボ湖には水上集落が存在し、航海技術も発達していました。彼らは、ギアナや西インド諸島へと航海していたとされています。また、アンデス山脈地域では、村落共同体を形成し、道路を建設するなど、近隣のムイスカ人との交流も確認されています。

スペイン植民地時代

1498年、クリストーバル・コロンブスが初めてベネズエラに到着し、その後、アロンソ・デ・オヘダやアメリゴ・ヴェスプッチが探検しました。ヴェスプッチがマラカイボ湖の集落を「小ヴェネツィア」と呼んだことが、ベネズエラの国名の有力な由来とされています。1523年にはクマナが建設され、1526年にはベネズエラ全土がイスパニョーラ島のアウディエンシアに統括されました。しかし、期待された黄金が産出しないことが判明すると、スペイン王室の関心は薄れ、ベネズエラはドイツのヴェルザー家に貸し出されるなど、その待遇は良くありませんでした。先住民はスペインの侵略に抵抗し、特にグアイカイプーロは諸部族をまとめ、戦いを挑みました。1567年にディエゴ・デ・ロサーダによってカラカスが建設されましたが、完全な制圧には長い年月を要しました。その後、1594年にはイギリス海賊の襲撃、1641年には大地震によりカラカスは壊滅的な被害を受けましたが、サント・ドミンゴのアウディエンシアによる統治が困難であったため、カラカスのカビルドには大きな自治権が認められるようになりました。1717年以降は、ヌエバ・グラナダ副王領に編入されましたが、1777年にはベネズエラ総督領が成立し、1786年にはカラカスに独自のアウディエンシアが誕生しました。この地は、貴金属が産出しないため開発が遅れていましたが、その分、プランテーション農業が発展し、黒人奴隷が導入されました。タバコ栽培が初期に発展し、その後カカオ栽培が主流となり、ヨーロッパへと輸出されました。スペインの制海権喪失により、フランス、オランダ、イギリスとの密貿易が活発化し、地元ブルジョワジーはより自由な貿易を望み、それが自由主義思想流入の一因となりました。

解放戦争とシモン・ボリーバル

18世紀末からヨーロッパの政治情勢が不安定化するにつれて、ベネズエラでも独立の気運が高まりました。1795年には黒人暴動、1797年にはトリニダード島がイギリスに占領されるなどの出来事が起こりました。1806年にはフランシスコ・デ・ミランダがアメリカから義勇兵を率いてベネズエラに上陸しましたが、失敗に終わりました。1808年、スペインの政情不安を受け、1810年にカラカスの指導者層はフンタを設立し、1811年にはベネズエラがスペインからの独立を宣言しました。シモン・ボリーバルは、1812年のカラカス地震で解放運動が一時的に停滞しましたが、ヌエバ・グラナダで抵抗を続け、1813年にはベネズエラを再解放しました。しかし、スペイン軍の勢力が盛り返し、ボリーバルはジャマイカに逃れました。そこでジャマイカ書簡を著し、ハイチの支援を受けて再起を図りました。1819年にはアンゴストゥーラでベネズエラ第三共和国が再建され、コロンビア共和国も創設されました。1821年にはカラボボの戦いで勝利し、カラカスを解放しました。しかし、1830年にエクアドルとベネズエラが分離独立し、ボリーバルは失意のうちに病死しました。解放戦争後、ベネズエラは多くの犠牲者を出し、人口も減少しました。

分離独立とカウディージョの支配

19世紀から20世紀初頭にかけてのベネズエラは、政治的不安定と独裁政権が続く時代でした。1830年にホセ・アントニオ・パエスが大統領に就任し、1847年まで専制政治を行いました。独立戦争で活躍した軍人や商人が、土地を所有し、経済力を増しました。欧米列強からの借款で独立戦争を遂行した代償に、経済特権を与え、外国に国家財政を支配されることになりました。1840年代には自由党が結成され、内戦が勃発しましたが、鎮圧されました。1847年にはホセ・タデオ・モナガスが政権を握り、1858年まで専制支配を行いましたが、これも崩壊しました。

連邦戦争

1858年にフリアン・カストロが大統領になり、連邦主義的な憲法を制定しましたが、連邦主義者の不満を招き、エセキエル・サモーラやフアン・クリソストモ・ファルコンらの自由主義者が反乱を起こし、「連邦戦争」が勃発しました。1863年にはファルコンが大統領となり、ベネズエラ連邦が成立しましたが、1868年にはモナガス親子のクーデターによって不安定な状態になりました。

グスマン時代

1870年から1888年までのグスマン時代には、アントニオ・グスマン・ブランコが自由主義的カウディージョとして近代化を推進しました。パリを模したカラカスの改造、反教会政策、鉄道敷設、自由貿易などを実施しました。また、ボリーバルの名誉回復も進められました。1888年に失脚した後は、経済のモノカルチャー化が進み、コーヒーが主要な輸出品となりました。

石油と独裁

1899年以降、タチラ州出身の独裁者による支配が続きました。1908年から1935年をゴメス時代と呼びます。1899年にはシプリアーノ・カストロが内戦に乗じて権力を握りましたが、1908年にはフアン・ビセンテ・ゴメスに排除されました。ゴメスは、石油開発を進め、ベネズエラを世界有数の石油輸出国にしましたが、その一方で独裁的な支配を続けました。1935年にゴメスが死去した後、軍事政権が継続しました。しかし、1945年の10月革命によりメディーナ政権が転覆し、ベタンクールが臨時大統領に就任しましたが、1948年のクーデターにより軍事評議会が政権を握り、1952年にはマルコス・ペレス・ヒメネスが独裁政権を樹立しました。

ベネデモクラシア

1958年の民主化以後、ベネズエラは文民による民主主義政権によって統治されています。1958年1月、ヒメネスが失脚し、12月には民主的な選挙が行われ、ロムロ・ベタンクールが大統領に就任しました。ベタンクールは、民主主義的な統治を確立し、ベネデモクラシアと呼ばれる体制を築きました。しかし、キューバ革命の影響を受けた左翼ゲリラとの抗争や、経済的な問題、汚職など、様々な課題も残りました。1989年のカラカス暴動は、経済政策への不満が爆発したものです。1992年には、ウゴ・チャベス中佐がクーデターを試みましたが失敗しました。1998年には、チャベスが大統領に当選し、ベネズエラの政治は新たな時代を迎えました。

カラカソ以降からチャベス時代

1989年にペレス政権が新自由主義モデルを導入したことで、カラカソと呼ばれる暴動が発生しました。その後、1998年にウゴ・チャベスが大統領に就任し、社会主義的な政策を推進しました。チャベスは、反米主義、反新自由主義を掲げ、国名を「ベネズエラ・ボリバル共和国」に変更しました。また、2002年にはクーデターが失敗に終わるなど、政治的な混乱も発生しました。チャベス政権は、石油収入を利用した社会福祉政策を進めましたが、同時に権威主義的な側面も強めました。2008年には、コロンビアとの関係が悪化し、国境問題も発生しました。

この歴史は、ベネズエラが多くの試練を乗り越えながら、その独自性を形成してきた過程を示しています。

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