ベルファスト (軽巡洋艦)

HMSベルファスト：戦火をくぐり抜けた軽巡洋艦の物語

1938年、北アイルランドの首都ベルファストの名を冠した同型艦の1隻として建造された軽巡洋艦「ベルファスト (HMS Belfast, C35)」は、イギリス海軍のタウン級軽巡洋艦（エディンバラ級）に分類されます。日本海軍の最上型に対抗すべく設計された同型艦は、8インチ砲の直撃にも耐える強力な装甲、32ノットを超える高速性、そして12門の6インチ主砲を備えていました。さらに水上機も搭載し、広範囲な哨戒活動と個艦防空能力を兼ね備えた、当時としては最先端の巡洋艦でした。

設計と建造

ベルファストの全長は187メートル、幅19.3メートル、喫水5.3メートル。4基の重油専焼ボイラーとパーソンズ式ギアード蒸気タービンにより、32.5ノットの速力を発揮しました。航続距離は13ノットで8,664海里を誇り、長期間の作戦行動にも対応可能でした。

主兵装は12門の6インチ砲（Mk XXIII）、副砲は12門の4インチ高角砲でした。対空火器としては、2ポンドポンポン砲と12.7mm機銃を備えており、初期の対空防御能力を有していました。また、21インチ魚雷発射管と爆雷を搭載し、対潜能力も備えていました。防御面では、4.5インチの主装甲帯、3インチから2インチの甲板装甲が艦の要所を保護していました。搭載機は、カタパルト射出式のスーパーマリン ウォーラス飛行艇2機でした。

ベルファストは1936年に起工され、1939年8月に就役。建造費用は200万ポンドを超え、その中には主砲や搭載機の費用も含まれていました。

第二次世界大戦

就役直後、ベルファストは本国艦隊に配属。ドイツ海軍通商破壊艦の撃滅や、中立国の船舶検査などで活躍しました。1939年10月には、ドイツの定期船「カップ・ノルテ」を拿捕する戦果を挙げました。しかし、1939年11月、フォース湾で磁気機雷に触雷し、大規模な修理を余儀なくされました。修理の間、艦体は強化され、対空兵装の更新、レーダー装備の充実など、大幅な近代化改修が行われました。

1942年、ベルファストは北極海での船団護衛任務に就きます。この任務はソ連への物資輸送を支援する極めて危険なものでしたが、レーダー技術の進歩により、空からの攻撃に対する警戒を軽減することができました。この期間中の1943年12月、ベルファストは北岬沖海戦に参加。ドイツ戦艦「シャルンホルスト」の撃沈に貢献しました。同艦は、僚艦と協力し、「シャルンホルスト」の追跡に重要な役割を果たしました。

1944年、ノルマンディー上陸作戦にも参加。上陸部隊への砲撃支援を行い、ゴールドビーチとジュノービーチの制圧に貢献しました。終戦間際には極東への転属を命ぜられ、日本本土への攻撃に備えて近代化改修が実施されましたが、日本の降伏により上陸作戦に参加する事はありませんでした。

戦後と博物館船

戦後は極東で活動した後、イギリス本国に帰還。予備役に編入されましたが、1950年代後半に大規模な近代化改修を受け、再び現役復帰を果たしました。この改修では対空兵装やレーダー、居住設備などが大幅に改善されました。朝鮮戦争にも参加し、沿岸砲撃などを通して国連軍を支援しました。1963年に予備役編入となり、その後解体される予定でしたが、民間団体「HMSベルファスト・トラスト」による保存運動により、1971年に博物館船としてロンドンのテムズ川に係留されることとなりました。

現在、帝国戦争博物館の一部として一般公開されているベルファストでは、当時の艦内生活の様子や、様々な武器・装備、作戦室などが展示されています。来場者は、第二次世界大戦から朝鮮戦争にわたる激動の歴史を肌で感じ、イギリス海軍の偉業を偲ぶことができます。長きに渡りイギリス海軍に貢献し、数々の海戦を生き抜いてきたベルファストの雄姿は、現在も多くの来場者を魅了し続けています。

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