ホラアナゴ科

ホラアナゴ科 (Synaphobranchidae)

ホラアナゴ科は、ウナギ目に属する魚類の分類群の一つです。この科には、ホラアナゴやコンゴウアナゴなど、深海に生息する底生魚を中心に、3亜科10属32種が含まれています。科の名前は、ギリシア語の「つながった」を意味する「synaphe」と、「鰓」を意味する「brangchia」に由来します。

分布と生態

ホラアナゴ科の魚類は、太平洋、インド洋、大西洋など、全世界の深海に広く分布する海水魚です。水深1,000〜3,500mの深海で生活する底生魚であり、ソコダラ科、アシロ科、トカゲギス科などと並び、深海生態系において重要な役割を果たしています。

食性は一般的に肉食性で、他の魚類や甲殻類を捕食します。また、コンゴウアナゴのように、他の生物の遺骸を専食する種類も存在します。

ホラアナゴ科の生態や生活史については、まだ不明な点が多く残されています。しかし、カライワシ上目のグループに共通する特徴として、ホラアナゴ科の魚類もレプトケファルスと呼ばれる独特の仔魚期を経て成長することが知られています。本科のレプトケファルスは、眼が斜めに細長く伸び、水晶体が極端に前方に寄った管状眼を持つという特徴があります。

形態

ホラアナゴ科の魚類は、他のウナギ目の仲間と同様に細長い体をしています。成魚は全長20〜180cm程度に成長する中・大型の魚類です。頭部は種類によって上下に平たく縦扁しますが、体部は側扁し、左右に平たくなっています。

3亜科に共通する主な形態学的特徴として、鰓の開口部が胸鰭よりも低い位置にあることが挙げられます。また、一部の種類は胸鰭を欠いています。第三下鰓骨は前方を向き、第三角鰓骨と鋭角を成します。椎骨の数は110〜205個です。

分類

ホラアナゴ科は、3亜科に細分されます。Nelson（2016）の体系では、10属32種が認められています。FishBaseには12属50種が記載されています。

ホラアナゴ亜科 (Synaphobranchinae)

ホラアナゴ亜科には、4属11種（FishBaseでは4属12種）が含まれます。両側の鰓の開口部が腹部でつながっていることが大きな特徴で、本科の英名である「cutthroat eel（喉裂きウナギ）」の由来となっています。下顎は上顎よりも長く、アンコクホラアナゴ属以外は鱗を持ちます。頭部は縦扁し、吻（口先）はやや尖っています。歯は小さく針状で、腹部の体色は暗く、背側は白色調です。

ホラアナゴ属 Synaphobranchus
Diastobranchus 属
アンコクホラアナゴ属 Haptenchelys
ソコアナゴ属 Histiobranchus

リュウキュウホラアナゴ亜科 (Ilyophinae)

リュウキュウホラアナゴ亜科には、7属26種（FishBaseでは7属37種）が記載されています。アサバホラアナゴ属など一部は、かつては独立の科として分類されていました。下顎は上顎よりも短く、リュウキュウホラアナゴ属の一部を除いて鱗を持ちません。頭部は上下に平たく縦扁し、やや丸みを帯びています。鋤骨の歯は比較的長く、大きいのが特徴です。アサバホラアナゴ属の一部および Thermobiotes 属は胸鰭を欠きます。

アサバホラアナゴ属 Dysomma
スルガアナゴ属 Dysommina
ヒレジロアナゴ属 Meadia
リュウキュウホラアナゴ属 Ilyophis
Atractodenchelys 属
Linkenchelys 属
Thermobiotes 属

コンゴウアナゴ亜科 (Simenchelyinae)

コンゴウアナゴ亜科は1属1種で、コンゴウアナゴ S. parasitica のみを含みます。本種は世界中に分布していますが、その範囲はとびとびで、実際には複数種を混同している可能性が指摘されています。沈降した生物の遺骸を主な餌とする腐肉食性の深海魚で、ヌタウナギの仲間と並び、深海の生態系で重要な位置を占めています。鱗は皮膚に埋もれており、体表面は粘液質でぶよぶよしています。頭部は全体的に丸みを帯びています。

コンゴウアナゴ属 Simenchelys

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