ホレイショ・パーカー

ホレイショ・パーカー（Horatio Parker、1863年9月15日 - 1919年12月18日）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活動したアメリカ合衆国の作曲家であり、優れた音楽教師でもありました。アーサー・フットと共に、第二次ニューイングランド楽派において、ドイツ音楽の伝統を重んじる姿勢を貫いた音楽家として知られています。

マサチューセッツ州オーバンデイルに生まれたパーカーは、初期の音楽教育をアメリカ国内で受け、著名な作曲家であるホレーショ・チャドウィックらにも師事しました。その後、さらなる研鑽を積むため、チャドウィックの紹介状を携えて1880年代にヨーロッパへ渡ります。ミュンヘンでは、作曲家・オルガニストとして高名なヨーゼフ・ラインベルガーのもとで学びました。このヨーロッパ滞在中に、彼は早くも主要な作品を完成させ、交響曲や劇的なカンタータで賞を受賞するなど、作曲家としての才能を開花させます。また、この地でバイエルン人女性と結婚しました。

アメリカに帰国したパーカーは、主にニューヨーク市を拠点に活動し、教師、オルガニスト、そして合唱指導者といった様々な役職を歴任しました。そして1893年には、コネチカット州ニューヘイブンにあるエール大学の音楽学部教授に就任し、亡くなるまでその地位を保持しました。エール大学は19世紀後半のニューヘイブンにおいて、パーカーを中心に音楽活動の一大拠点となっていました。

今日、パーカーの名が特に記憶されているのは、ラテン語オラトリオ『最後の審判（Hora novissima）』の作曲家としてでしょう。父親と幼い息子の相次ぐ死という深い悲しみの中から生まれたこの哀悼音楽は、アメリカ国内だけでなくイギリスでも高い評価を得ましたが、同時代の作曲家エルガーには受け入れられなかったという逸話もあります。しかし、彼は『最後の審判』にとどまらず、非常に多産で手腕に優れた作曲家でした。2つのオペラ、多数の歌曲、オルガン曲、舞台音楽、そして管弦楽伴奏付きの膨大な数の合唱曲など、幅広いジャンルで作品を生み出しました。オペラ『モナ』や、ニールセンの影響を受けた発展的な調性を用いる交響詩『北国のバラード』、オルガンと弦楽合奏、打楽器のための協奏曲変ホ短調なども彼の重要な作品群に含まれます。

パーカーの音楽様式は、概して穏健な特徴を示しています。彼の恩師であるチャドウィックが、リヒャルト・シュトラウスやダンディ、プッチーニ、ドビュッシーといった新しい潮流を取り入れ、ブラームスやドヴォルザークからの脱却を目指したのとは対照的に、パーカーはおおむねワーグナーまでのドイツ・ロマン派音楽の伝統の中に留まりました。特に1900年前後の作品においては、メンデルスゾーンやブラームスの影響が顕著に見られます。また、『最後の審判』をはじめとするいくつかの作品では、後に彼の門下生となるチャールズ・アイヴズに先駆けて、既存の旋律や断片を引用する技法を好んで用いており、この点は現代の研究者から注目されています。

作曲家としての活躍に加え、パーカーは傑出した音楽教育者でもありました。エール大学教授として、彼は多くの才能ある学生を指導し、20世紀のアメリカ楽壇を支える人材を多数輩出しました。彼の門下生には、チャールズ・アイヴズをはじめ、クインシー・ポーター、ウォルター・ピストン、ロジャー・セッションズ、ダグラス・ムーアといった、アメリカ音楽史において重要な位置を占める作曲家たちが名を連ねています。

存命中は、その高度な作曲技法に通じた職人的な芸術家として高く評価され、アメリカを代表する作曲家の一人と見なされていたパーカーですが、今日では『最後の審判』や教育者としての功績以外ではあまり知られていないのが現状です。元来虚弱な体質に加え、教会や大学での多忙な職務が重なり、彼は1919年、比較的若くして急逝しました。しかし、彼の作品と、彼が育てた多くの音楽家たちは、アメリカ音楽史における彼の重要な足跡を今に伝えています。

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