マンフレッド交響曲とは？意味をやさしく解説

マンフレッド交響曲：チャイコフスキー唯一の標題交響曲

ピョートル・チャイコフスキーの《マンフレッド交響曲》ロ短調作品58は、バイロン卿の劇詩『マンフレッド』に着想を得た、彼の唯一の標題交響曲です。1885年に作曲され、番号は付されていませんが、交響曲第4番と第5番の間に位置します。

ミリイ・バラキレフに献呈され、1886年にモスクワで初演されました。演奏時間は約55分。作曲者自身による4手ピアノ版も存在します。

作曲の経緯

この交響曲は、バラキレフがチャイコフスキーに提案した企画でした。バラキレフは当初ベルリオーズに作曲を依頼しましたが、高齢のため断られ、チャイコフスキーに依頼することになりました。バラキレフは、この壮大な主題が自身の精神構造に合わないと述べています。

チャイコフスキーはバラキレフからの詳細な指示を受けつつも、自身の判断を貫き作曲しました。完成当初は自信を持っていましたが、後に第1楽章以外を破棄しようと考えたこともあったようです。

楽器編成

フルート3（第3フルートはピッコロ持ち替え）、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット（A管）2、バスクラリネット、バスーン3、ホルン4、コルネット2、トランペット2、テノールトロンボーン2、バストロンボーン1、チューバ1、ティンパニ、バスドラム、シンバル、タムタム、鐘、トライアングル、タンバリン、ハープ2、弦楽五部、オルガンという大規模な編成です。

楽曲構成

全4楽章から構成されています。

第1楽章：アルプスの山中を彷徨うマンフレッド

レント・ルグーブレ - ピウ・モッソ (アンダンテ) - モデラート・コン・モート - アンダンテ - アンダンテ・コン・ドゥオーロ

長大な序奏とソナタ形式で構成され、マンフレッドの主題が全体を支配します。悲しげな雰囲気で始まり、クライマックスを迎えます。

第2楽章：アルプスの妖精

スケルツォ。ヴィヴァーチェ・コン・スピリート - リステッソ・テンポ

ロ短調、2/4拍子、3部形式。トリオとコーダにマンフレッドの主題が現れます。

第3楽章：山人の生活

アンダンテ・コン・モート

ト長調、6/8拍子、自由なロンド形式。オーボエによる主要主題が中心となり、様々な形で扱われます。

第4楽章：アリマーナの地下宮殿

アレグロ・コン・フオーコ - レント - アレグロ・コン・フォーコ - アンダンテ - アダージョ, マ・ア・テンポ・ルバート - モルト・ピウ・レント - アレグロ・ノン・トロッポ - アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ - ラルゴ

アレグロ・コン・フオーコを主部とする3部形式で、第1楽章の再現と長大なコーダが続きます。激情的な起伏を経て、最後は静かに閉じられます。

版の違い

原典版と改訂版が存在し、終楽章のコーダに違いがあります。原典版では開始楽章のコーダが回想されますが、改訂版では救いのハーモニウムのコラールが追加されています。

評価

評価は分かれており、傑作とみなす人もいれば、そうでない人もいます。バーンスタインは本作を酷評した一方、トスカニーニはチャイコフスキーの最も華麗な作品の一つと評価しました。

近年は録音される機会が増えており、多くの指揮者によって演奏されています。スヴェトラーノフはこの曲を愛し、原典版と改訂版の両方を録音しました。

録音数は少なくありませんが、交響曲全集に収録されないこともあり、番号付きの交響曲に比べて不遇な扱いを受けています。

マンフレッド交響曲