ミノタウロス (ロケット)

ミノタウロス

アメリカ合衆国が生み出した固体燃料ロケット「ミノタウロス」シリーズは、そのユニークな開発経緯から注目を集めています。本シリーズの最大の特徴は、かつて運用されていた大陸間弾道ミサイル（ICBM）、具体的にはミニットマンとピースキーパーの主要な推進段などを転用・再利用して構築されている点です。このロケットは、ノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズ社（旧オービタル・サイエンシズ社）によって製造されています。ミノタウロスは、比較的小型の人工衛星を地球低軌道へ投入する任務から、弾道飛行ミッションまで、幅広いニーズに応えるために複数の派生型が開発されました。

シリーズ構成と基となったミサイル

ミノタウロスファミリーは、基になったミサイルの種類によって大別されます。ミノタウロスIおよびミノタウロスIIは、ミニットマンミサイルをそのルーツとしています。一方、ミノタウロスIII、ミノタウロスIV、ミノタウロスV、そしてミノタウロスCは、ピースキーパーミサイルの技術的資産を活用して開発されました。これらのモデルのうち、ミノタウロスI、IV、V、およびCは現在も積極的に運用されています。

主要モデルの解説

ミノタウロスI

主に小型の衛星を低軌道へ打ち上げるために設計されたモデルです。ミニットマン由来のM55A1（第1段）やSR19（第2段）などに、Orion 50XL（第3段）、Orion 38（第4段）といったオービタル・サイエンシズ社製のコンポーネントを組み合わせて構成されます。さらに、必要に応じてHAPSと呼ばれるオプションの第5段を追加することも可能です。ペイロードの能力は打ち上げ地点によって異なり、例えばフロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地からは、高度185km、軌道傾斜角28.5度の軌道に最大580kgの衛星を運べます。カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地からは、より高緯度の太陽同期軌道（高度740km）へ約310kgのペイロードを投入する能力を有します。

ミノタウロスII

このモデルは、衛星打ち上げではなく、主に弾道飛行ミッションに特化しています。「キメラ」や「TLV」という別名でも知られます。基本的にミニットマンIIミサイルをベースに、軌道追跡および制御のためのシステムを追加したものです。M55A1、SR19、M57という3段構成で、高度6700kmに達する弾道軌道に最大460kgのペイロードを運ぶことが可能です。弾道ミサイル迎撃試験のターゲットとしても重要な役割を担っています。

ミノタウロスIII

ミノタウロスIIと同様に弾道飛行を目的としていますが、ピースキーパーミサイル由来のより強力なロケットモーターを使用しており、大幅に大きなペイロードに対応できます。SR-118、SR-119、SR-120といった大型の推進段と、4段目のSuper HAPSで構成されます。高度6700kmの弾道飛行において、最大3060kgという、ミノタウロスIIと比較して非常に高いペイロード能力を備えています。ただし、2013年9月時点の情報では、このモデルの打ち上げ実績はまだありませんでした。

ミノタウロスIV

ミノタウロスIよりも重いペイロードを低軌道へ投入できる能力を持つモデルです。ピースキーパー由来のSR-118、SR-119、SR-120を主要な推進段として使用し、最終段にOrion 38を備えた4段構成です。2010年4月22日に初めて宇宙へと飛び立ちました。例えば、ケープカナベラルからは高度185km、軌道傾斜角28.5度の軌道に最大1735kgのペイロードを送り込むことが可能です。

ミノタウロスV

ミノタウロスIVをベースに、さらに第5段を追加して能力を拡張したモデルです。これにより、静止トランスファー軌道（GTO）のようなより遠方への軌道や、月、あるいはさらに太陽系の彼方への探査ミッションにも対応できるようになりました。このモデルは2013年9月に初めて打ち上げに成功し、その際はNASAの月探査機LADEE（Lunar Atmosphere and Dust Environment Explorer）を月遷移軌道へ投入する任務を遂行しました。

ミノタウロスC

このモデルは、元々「トーラスロケット」という名称で運用されていたものが改称されたものです。本来は空中発射型のペガサスロケットに、ピースキーパー由来の大型第0段を追加することで、地上からの打ち上げを可能にした独自の構成を持ちます。シリーズとしては比較的初期の1994年に初飛行しましたが、その当時は「トーラス」と呼ばれていました。2011年に発生した2度の打ち上げ失敗を受けて、その後、現在のミノタウロスシリーズの一員であることを示す「ミノタウロスC」へと名称が変更されました。名称の末尾にある「C」は「商用（Commercial）」を意味しています。

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