ムムタズマハル (競走馬)

ムムタズマハル：伝説のスピードと血統の申し子

ムムタズマハル(Mumtaz Mahal)は、イギリスで誕生した競走馬です。愛称は「マムティ」。その名は、ムガル帝国の皇帝シャー・ジャハーンの寵愛された妃、ムムターズ・マハルに由来しています。

ムムタズマハルは、父ザテトラークから優れたスピードと芦毛の毛色を受け継ぎました。その美しい馬体から、1歳時のセリで名門アーガー・ハーン3世に高額で落札されます。

2歳シーズン、ムムタズマハルは驚異的なスピードで関係者を魅了しました。調教段階ですでに類まれな才能を示し、5ハロン（約1km）の試走では、後の名繁殖牝馬フライアーズドウター（英クラシック三冠馬バーラムの母）を大きく引き離すほどの速さを見せつけたのです。

デビュー戦のスプリングステークスでは、後のオークス優勝馬ストレイスレースを相手に圧勝。続くクイーンメアリーステークスでは10馬身差という圧倒的な勝利を収め、その後も主要レースを連勝し5連勝を達成しました。しかし、インペリアルプロデュースステークスで初黒星を喫します。

3歳シーズン、1000ギニーでは圧倒的な人気を集めましたが、マイル戦という距離の壁に阻まれ、2着に敗れました。以降は距離が延びるレースでは結果を残せず、スプリント戦に特化した戦績となりました。それでも、6ハロンのキングジョージステークスとナンソープステークスを制し、華々しい現役生活に幕を閉じました。

ムムタズマハルの現役時代は、スピードと早熟さを兼ね備えた短距離に強いスプリンターとして記憶されています。「空飛ぶ[牝馬]」の名は伊達ではなく、その類まれなスピードは多くの関係者の心を掴み、競馬史に燦然と輝く偉業となりました。

引退後は、アーガー・ハーン3世のシェシューン牧場で繁殖牝馬として活躍します。その優れた血統は、多くの優秀な競走馬を生み出すことに繋がりました。ムムタズマハルから生まれたMilzaはジュライカップを、Badruddinはサセックスステークスを制覇。さらにMumtaz Begum、Mah Mahal、Rustom Mahalといった優秀な繁殖牝馬を輩出しました。これらの馬は、ムムタズマハルの血統を世界中に広め、その子孫にはナスルーラやロイヤルチャージャー、マームードといった名馬が数多く含まれ、日本においてもホクトベガやタニノギムレット、スマートファルコン、タイトルホルダーといった重賞勝ち馬が多数輩出されています。ムムタズマハルの血統は、現代競馬においても大きな影響を与え続けていると言えるでしょう。

ムムタズマハルは、フランスで余生を送った後、第二次世界大戦下のドイツで亡くなったと伝えられています。短い生涯でしたが、その競走馬としての活躍と、繁殖牝馬としての偉大な功績は、人々の記憶に深く刻み込まれています。彼女の血統は、今もなお世界の競馬界にその名を轟かせ、伝説の名牝として語り継がれています。

もう一度検索