ムーバス

武蔵野市コミュニティバス「ムーバス」

ムーバスは、東京都武蔵野市が運営するコミュニティバスです。1995年11月26日に運行を開始して以来、地域住民の足として親しまれています。その運行形態は、全国に「コミュニティバス」という概念を広める先駆けとなりました。

概要

ムーバスは、吉祥寺駅、三鷹駅、武蔵境駅を起点として、市内を網羅する7路線9ルートで運行しています。これらの路線は、従来の路線バスが乗り入れることが難しい狭い道も走行し、バス停から離れた地域やバスの便数が少ない地域を結び、地域住民の生活を支えています。

運賃は大人・子供一律100円で、未就学児は無料です。東京都シルバーパスや障害者手帳による割引はありません。全路線で小型車両が使用されており、車椅子での利用も可能です。

2004年から2021年まで、共通回数券が販売されていましたが、現在は利用できなくなっています。2012年からは、PASMOやSuicaなどの交通系ICカードが利用可能です。

ムーバスは、駅周辺の交通渋滞緩和を目的とした「パークアンドライド」の取り組みも行っていました。以前は吉祥寺北西循環の近くに「ムーパーク」という駐車場があり、ムーバスに乗り換えることで駅周辺の混雑を緩和していました。

誕生の背景

ムーバス誕生のきっかけは、1990年に市長宛に届いた一通の手紙でした。その手紙には、高齢になり足が不自由になったため、バス停まで歩くのが困難であるという、高齢者の切実な交通不便の訴えが綴られていました。

当時、武蔵野市内のバス路線は幹線道路沿いに集中しており、住宅街に住む人々にとってはバスの利用が不便でした。また、吉祥寺駅周辺では路上駐車や違法駐輪が深刻化しており、市はその対策に多額の費用を費やしていました。

これらの問題を解決するため、武蔵野市はコミュニティバスの開設を検討し、1991年に専門家による研究会を発足させました。市民へのアンケートや需要調査を行い、運賃を100円均一に設定したワンコインバスとして計画が進められました。

1994年には運行事業者を公募しましたが、100円という低運賃のため、当初は多くの事業者から断られました。最終的に、関東バスが赤字を市の補助金で補填するという条件で運行を受託し、1995年11月26日に運行が開始されました。

運行開始当初は、100円という低運賃のため赤字が懸念されましたが、予想を上回る利用客の増加により、開業3年後の1998年には黒字に転じました。ムーバスの成功は、全国的なコミュニティバスブームを巻き起こし、その運行形態は、全国の自治体のコミュニティバス開設に大きな影響を与えました。

また、ムーバスの運行開始に合わせ、日野自動車が小型バス「リエッセ」を開発し、ムーバスの仕様に合わせた車両が導入されました。ムーバスはソフトとハードの両面で、コミュニティバスの成功に大きく貢献しました。

現行路線

ムーバスは、以下の7路線9ルートで運行しています。

1. 吉祥寺東循環（1号線）：吉祥寺駅東側を循環する路線。高齢者の多い住宅地を通るため、生活路線として利用されています。一部区間は杉並区内にも入ります。
2. 吉祥寺北西循環（2号線）：吉祥寺駅北西側を循環する路線。成蹊学園の裏や商店街を通る、利用客の多い路線です。
3. 境南 西循環・東循環（3号線）：武蔵境駅南側を循環する路線。武蔵野赤十字[[病院]]へのアクセスに便利です。
4. 三鷹駅北西循環（4号線）：三鷹駅北西方向の住宅地を循環する路線です。
5. 境西循環、境・東小金井線（5号線）：武蔵境駅北側を循環する路線と、武蔵境駅と東小金井駅を結ぶ路線です。境・東小金井線は小金井市にも乗り入れています。
6. 三鷹・吉祥寺循環（6号線）：三鷹駅と吉祥寺駅を結ぶ路線。井の頭通り沿いを走行します。
7. 境・三鷹循環（7号線）：武蔵境駅と三鷹駅を結ぶ路線。三鷹市との共同運行路線です。

過去の路線

かつては、吉祥寺東循環で、そーらの家を経由するルートがありましたが、住民の意見により廃止されました。

車両

ムーバスでは、小型バスが使用されています。過去には日野・リエッセが使用されていましたが、現在は日野・ポンチョが主力となっています。ムーバス専用車両は、銀色の車体にカラフルな数字が描かれた特徴的なデザインです。

まとめ

ムーバスは、武蔵野市の地域住民にとって欠かせない交通手段であり、コミュニティバスの成功例として全国的に知られています。100円均一という低運賃と、細やかな運行ルートは、高齢者や交通弱者の方々の生活を支え、地域社会の活性化に貢献しています。

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