メフメト5世

メフメト5世の生涯

メフメト5世（Mehmed V Reshad）は、1844年11月2日に生まれ、1918年7月3日に73歳でこの世を去ったオスマン帝国の第35代皇帝です。彼は第31代皇帝アブデュルメジト1世の子であり、また第33代皇帝のムラト5世と第34代皇帝アブデュルハミト2世の弟であり、その後第36代皇帝のメフメト6世の兄でもあります。

即位と混乱

メフメト5世が即位したのは、青年トルコ党による1908年の蜂起が引き金となり、翌1909年に兄のアブデュルハミト2世が廃位されたことによります。この時、メフメト5世は実質的な権力を持たない傀儡皇帝として擁立されました。青年トルコ党は彼の下で立憲君主制の確立を目指しましたが、その過程で憲法改正が行われ、非常大権条項の削除が決定されるなど、権力の制限が試みられました。

新たに召集された議会では、立憲政治の方針を巡り、統一進歩派と一致自由派が対立し、政府内部での混乱が続きました。このような社会不安が続く中、帝国全体の状況は厳しくなっていきました。

伊土戦争

その後、1911年にはイタリアとの間で伊土戦争が勃発します。イタリアは北アフリカのトリポリ・キレナイカを攻撃し、オスマン軍は徹底的な抵抗を試みましたが、最終的には1912年1[[2月]]に休戦し、トリポリやキレナイカなどの地域をイタリアに割譲せざるを得なくなりました。この地域は戦後、「リビア」と名付けられ、イタリアの植民地経営が始まることになります。

バルカン戦争

伊土戦争の直後の1912年8月、アルバニアで独立を求める反乱が発生し、これに便乗したギリシャ、セルビア、ブルガリア、モンテネグロのバルカン四国が同盟を結成し、オスマン帝国に宣戦布告しました。この戦争は第一次バルカン戦争と呼ばれ、オスマン軍はまたも敗北を喫し、領土を大幅に割譲する蔭で、アルバニアの独立も承認せざるを得なかったのです。

1913年には第2次バルカン戦争が勃発し、オスマン帝国はセルビア・ギリシャ側に加担してトラキア地方を奪回することに成功しました。この戦争で功績を挙げたエンヴェル・パシャは、国政の実権を掌握し、ドイツとの同盟を結ぶことになります。

第一次世界大戦

1914年7月に第一次世界大戦が勃発すると、メフメト5世が即位するオスマン帝国は、1914年10月にドイツ側として参戦し、ロシア領を攻撃します。しかし、連合国側のイギリス、フランス、ロシアが相次いで宣戦し、帝国は厳しい戦況に追い込まれました。結果、イギリスにキプロス島を奪われ、ロシアにエルズルムなどを占領されました。

特に1915年から1916年の間には、オスマン帝国によるアルメニア人に対する大規模な虐殺が行われ、犠牲者は100万人を超えるともいわれています。

それでも、ガリポリの戦いではオスマン軍が連合国軍の侵攻を撃退し、一時的に戦局を有利に展開しました。この勝利は、イスタンブールを死守するうえで重要な意味を持つものでした。1916年2月には、メフメト5世はドイツ帝国から元帥位を授与されました。

戦況の悪化と崩御

しかし、その後の戦況は悪化し、オスマン帝国は連合国に追い詰められていくことになります。メフメト5世は政治的行動を起こす力を持たず、1918年7月3日に73歳で崩御。彼の後を弟のメフメト6世が継ぎました。メフメト5世の死去から約100年後の2010年5月28日、彼の孫であるハサン・オルハン皇子がエジプトで亡くなり、彼はカイロに埋葬されましたが、亡くなる際の意向はイスタンブールに埋葬されることでした。残念ながら、外交的な問題により、その夢は実現しませんでした。

このように、メフメト5世の生涯はオスマン帝国の衰退と混乱、心の変革の象徴であり、彼の治世の出来事は帝国の歴史に深く刻まれています。

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