オルハン

オルハン：オスマン帝国を築き上げた第二の皇帝

オルハン（1281年 - 1362年）は、オスマン帝国の第二代皇帝であり、初代皇帝オスマン1世の息子として生まれました。彼の治世は、オスマン帝国が遊牧民的な集団から、より組織化された君侯国家へと変貌を遂げる上で重要な時期であり、帝国の実質的な建国者として高く評価されています。

生涯

即位とブルサの征服

オルハンの即位前の経緯は不明な点が多く、彼の出自については様々な説が存在します。1324年または1326年に即位したとされ、父オスマン1世の遺志を継ぎ、ブルサの攻略に尽力しました。1326年4月6日、ブルサを征服し、首都と定めました。その後、ニカイア（現イズニク）やニコメディア（現イズミット）を征服し、領土を拡大しました。

1329年には、東ローマ帝国軍をペレカノンの戦いで破り、オスマン帝国の勢力をさらに拡大しました。この勝利は、オスマン帝国を辺境の軍事集団から一侯国へと飛躍させる大きな転換点となりました。1335年から1345年の間には、カレスィ侯国を併合し、その海軍力を手に入れることで、バルカン半島への進出を可能にしました。

バルカン半島への進出

東ローマ帝国との間には頻繁に軍事衝突がありましたが、両帝国の間には一時的に同盟関係も生まれました。1341年に東ローマ皇帝アンドロニコス3世が崩御すると、帝位をめぐる内紛が勃発し、オルハンはヨハネス6世カンタクゼノスを支援し、彼の帝位獲得に貢献しました。1346年には、ヨハネス6世の娘テオドラを妻に迎え、バルカン半島への軍事介入を強化しました。

1352年から1353年の間には、ヨハネス6世への援助と引き換えに、カリポリス（現ゲリボル）付近のチンペ城砦を獲得しました。1354年の大地震に乗じて、スレイマンがカリポリス一帯を占領し、オスマン帝国はバルカン半島への足掛かりを確立しました。ヨハネス5世はハリル（英語版）に娘を嫁がせ、オスマン帝国との関係強化を図りました。

晩年

オルハンの崩御年は1359年から1362年の間と推定されています。後継者と目されていた長子スレイマンは、オルハンに先立って死去しました。そのため、後継者争いが起こり、最終的には次男のムラト1世が帝位を継承しました。

内政

軍事集団から国家への脱皮

オルハンの治世下で、オスマン帝国は支配領域を拡大し、定住民や商人など、多様な人々を統治する必要に迫られました。ブルサの東ローマ帝国の行政機構を受け継ぎ、イスラム法学者（ウラマー）や書記を招聘し、統治体制を確立しました。1331年には、イズニクにオスマン帝国最初のメドレセ（大学）を創設し、ウラマーの育成に力を入れました。

宰相にはアラエッディン・パシャを、ベイレルベイ（司令官）には長子のスレイマンを任命し、行政と軍事の統括を任せました。

軍制改革の試み

オルハンの時代には、軍服に民族的な帽子が取り入れられました。軍の再編成を行い、トルコ系の歩兵（ヤヤ）と騎兵（ミュセッレム）からなる常備軍を創設しようとしましたが、十分な成果は得られませんでした。しかし、非正規の騎兵（アクンジュ）は、バルカン半島での勢力拡大に大きく貢献しました。彼らは略奪品を獲得する権利を持ち、バルカン半島の国境地帯で活躍しました。

アクチェ銀貨

1326年 - 1327年には、オスマン帝国独自の貨幣であるアクチェ銀貨が初めて鋳造されました。この硬貨は、オスマン帝国の通貨の基本単位として長く用いられました。

ブルサの統治

オルハンが獲得したブルサは、アナトリアにおける商業の一大拠点として発展しました。ジェノヴァやヴェネツィアの商人が訪れ、絹製品と毛織物を交換しました。また、ブルサの聖エリアス教会をモスクに改修し、父オスマン1世を埋葬しました。

人物

オルハンは、誠実な人格と信仰心を持った人物として知られています。イズニクに救貧院を開設した際には、自らスープを配り、夜には付木を焚いたというエピソードが残っています。イブン・バットゥータの『大旅行記』には、オルハンが首都に長く留まらず、国内を見回り、時には異教徒と戦ったという記述があります。

オルハンは、オスマン帝国を真の国家へと発展させた傑出した指導者であり、彼の遺産は今日に至るまでオスマン帝国の文化と歴史に深く刻まれています。

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