モクレン属

モクレン属 (Magnolia) の詳細

モクレン属は、モクレン科に分類される被子植物の属の一つであり、常緑または落[[葉性]]の高木から低木まで、多様な形態を持つ植物群です。これらの植物は、切れ込みのない単葉が互生し、枝先に大きな花を単独で咲かせるのが特徴です。花は一般的に3数性の花被片を持ち、多数の雄しべと雌しべが花軸にらせん状に配置されています。

特徴

形態: 常緑または落[[葉性]]の高木から低木。
葉: 単葉で全縁、葉柄を持ち、羽状脈。互生で螺旋状に配置されるのが一般的ですが、ホオノキのように枝先に集まってつく種も存在します（偽輪生）。
芽: 2枚の托葉が合着したキャップ状の芽鱗で覆われ、托葉は早落性で、枝に托葉痕を残します。
花: 大きく、放射相称で、枝先に単生するのが基本です。ただし、オガタマノキ節では葉腋の短枝につきます（偽腋生）。両性花が基本ですが、まれに単性花で雌雄異株または雄性両性異株の種もあります。花被片は離生し、6～9枚（種によっては45枚）、通常3枚ずつ2～多輪につきます。花被片は花弁状ですが、種によっては最外輪が萼片状になるものもあります。雄しべと雌しべは多数で、伸長した花托上にらせん状につきます。雄しべは離生し、花糸は短く太く、葯隔が突出しています。雌しべは離生心皮で多数、ときに少数で、縁辺胎座に胚珠が1心皮あたり2～20個あります。花の匂い成分は多様で、テルペノイド、フェニルプロパノイド、含窒素化合物、脂肪酸誘導体、分枝鎖アミノ酸誘導体などが種によって異なります。
果実: 裂開する袋果で、1つの花の果実が集まって集合果を形成します。個々の果実は縦に裂開しますが、横周裂開するものもあります。1つの果実に1～12個の種子を含み、種子は赤い肉質の種皮で覆われ、果実から出て珠柄で垂れ下がります。内種皮は石質で硬く、黒色で発芽抑制物質を含みます。
染色体数: 基本染色体数は x = 19 です。

分布と生態

モクレン属の植物は、東アジアから東南アジア、北米東部から南米の一部の温帯から熱帯地域に隔離分布しています。葉は常緑のものと落[[葉性]]のものがあります。虫媒花で、甲虫、ハエ、ハチなどによって送粉されます。果実が裂開して露出する赤い種子は、主に鳥によって散布されます。

人間との関わり

モクレン属は、美しい花を咲かせるため観賞用として広く栽培されており、交配による品種改良も盛んです。特に、モクレン、ハクモクレン、ソコベニハクモクレン、コブシ、タイサンボクなどがよく植えられています。

また、モクレン類のつぼみを乾燥させた「辛夷（しんい）」は、鼻炎、頭痛、熱、咳などの生薬として利用されます。コウボクやホオノキの樹皮を乾燥させた「厚朴（こうぼく）」は、マグノロールやホノキオールを含み、健胃、整腸、鎮咳などの効果があります。

モクレン属の植物は、香水や香料にも利用されることがあり、木材としても活用されます。ホオノキの葉は、食品の皿や容器としても使われています。

系統と分類

モクレン属の花は、大型で多数の雄しべと雌しべがらせん状に配置されている特徴から、被子植物における原始的な形質を持つと考えられています。しかし、これらの形質はモクレン科またはモクレン目の一部における派生形質、あるいは甲虫媒への適応の結果であるとの見解もあります。

分類史

初期の記録: 1651年に出版された『メキシコ植物史』に、現地名で 'Eloxochitl' と呼ばれていた植物（おそらく Magnolia macrophylla subsp. dealbata）の図が掲載され、これが西洋で初めて紹介されたモクレン属の記録と考えられています。
属名の由来: 1703年にシャルル・プリュミエが、植物学者ピエール・マニョルにちなんで Magnolia という属名を命名しました。この名前は、後にリンネによって正式な学名として採用されました。
* 分類の変遷: 20世紀後半には、モクレン科のユリノキ属以外の種が、モクレン属、オガタマノキ属など複数の属に分けられていましたが、分子系統学的研究の結果、これらの属は単一のモクレン属に統合される傾向にあります。現在では、ユリノキ属を除くモクレン科の種は、全てモクレン属にまとめられることが多いです。

結論

モクレン属は、多様な形態、分布、生態を持つ植物群であり、人間の生活とも深く関わっています。その美しい花は観賞用として愛され、また生薬や木材など、さまざまな形で利用されています。分子系統学的研究の進展により、その分類は変化を続けていますが、モクレン属の重要性は今後も変わることはないでしょう。

もう一度検索