モナスティル (チュニジア)

モナスティル (Monastir)

チュニジア北東部の海岸線、サヘル地帯に位置するモナスティルは、長い歴史を持つ魅力的な都市です。スースから南へ約20km、首都チュニスからは南へ162kmの距離にあり、モナスティル県の県都としての役割も担っています。かつては古くからの漁港として栄えましたが、現在では国内外から多くの人々が訪れるチュニジア有数の観光地へと発展しています。2005年時点での人口はおよそ71,546人でした。

モナスティルという名称は、ラテン語で「修道院」を意味する「monasterium」に由来しています。この地には、フェニキア時代から古代ローマ時代にかけて存在した都市「ルスピナ」の跡があり、その廃墟の上にモナスティルは築かれました。アラブ人が初めて北アフリカのイフリーキーヤ地方に入植した際、イスラーム世界における重要な中心地となったケルアンや沿岸都市のスースと共に、モナスティルもその一部を形成しました。

市内で特に目を引く歴史的建造物の一つが、よく保存されているリバートです。リバートは、イスラーム初期に建設された沿岸警備のための要塞であり、かつては海上から接近する敵国の船を監視する重要な役割を果たしていました。また、この静かで穏やかな都市のリバートは、多くのウラマー（イスラーム学者）が瞑想や学びに耽るために滞在する場所としても知られていました。現代では、この歴史的なリバートは映画のロケ地としても利用されており、有名なコメディ映画『モンティ・パイソンとライフ・オブ・ブライアン』の撮影場所としても使われました。

モナスティル周辺の自然環境も特筆すべき点です。モナスティル・ハビーブ・ブルギーバ国際空港の南側に広がる塩湖群は、豊かな生態系を育んでいます。この湿地帯には、腐肉食の魚類が生息するほか、ツクシガモ、セイタカシギ、ソリハシセイタカシギ、キアシセグロカモメ、コアジサシといった多様な水鳥が集まります。これらの生態学的な重要性が認められ、この塩湖群は2012年にラムサール条約湿地として登録されました。

交通の要衝としては、モナスティル・ハビーブ・ブルギーバ国際空港が重要な役割を担っています。この空港からは、主に西ヨーロッパ諸国との間に国際線が運航されており、多くの観光客がこの空港を利用してモナスティルや周辺地域へとアクセスしています。

市内のその他の見どころとしては、広大なシーディ・マザリ墓地があります。メディナ（旧市街）の北側に位置するこの墓地は、著名なマークリ派法学者であるムハンマド・アル＝マーザリーが埋葬されていることからその名がつけられました。この墓地に隣接して建つのが、壮麗な金色のドームを持つブルギーバ廟です。この廟は、チュニジア共和国の初代大統領であるハビーブ・ブルギーバ氏のために建てられました。モナスティルはブルギーバ大統領の出身地であり、彼の栄誉を称え、また一族を祀るための墓所として、1963年に建設されました。

国際的なつながりとしては、ドイツの都市ミュンスターと姉妹都市の関係を結んでいます。

モナスティルは、古代の歴史、イスラーム初期の遺産、豊かな自然環境、そして近現代のチュニジアを代表する人物とのゆかりなど、様々な要素が融合した魅力的な都市です。歴史散策やバードウォッチング、リゾート滞在など、多様な楽しみ方ができるデスティネーションと言えるでしょう。

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