モン族 (Mon)

モン族：東南アジアの古民族

モン族（Mon）は、東南アジアに居住する民族の一つで、古くからこの地域に住んでいます。かつてはハリプンチャイ王国を築き、後にミャンマーのペグーに移り住んだため、ペグー人（Peguan）とも呼ばれることがあります。ラーマン（Raman）やムン（ビルマ語: မွန် [mʊ̃̀]）という名称も使われます。

歴史的背景

モン族は、他の民族との混血を経て、その文化や言語は変化を遂げました。歴史的には、ビルマ語でタライン（Talaing; တလိုင်း）とも呼ばれていましたが、この言葉は蔑称とされ、現代では「ムン」に改められる傾向があります。

文化と特徴

モン族は、浅黒い肌、大きな目、巻き舌音が多い言語、高床住居、焼畑耕作、水牛供犠、精霊信仰、魔術、壺酒、精緻な竹藤細工、狩猟・罠、腰機織り、ゴング音楽など、ラオス国内のモン・クメール民族に共通する文化を持っています。

混同に注意

中国に多く住むミャオ族（苗族）の支系で、自称をモン (Hmong) とする民族集団とは全く別であり、混同しないよう注意が必要です。

古代からの歴史

モン族は、紀元前1500年頃には東南アジアに到達していたとされ、ネグリト（オーストラロイド）のマニ族などに次いで古い民族と考えられています。

スワンナプーム王国

伝説によると、モン族は紀元前300年ごろに現在のスパンブリー県周辺にスワンナプーム王国を建国し、紀元前200年ごろにはアショーカ王の派遣した伝道者によって上座部仏教を信仰し始めたとされています。しかし、モン族はそれ以前から海路を通じて仏教との接触があったと主張しています。4世紀ごろにはワット・プラパトムチェーディーが建設されました。

ドヴァーラヴァティー王国

6世紀から11世紀にかけてはドヴァーラヴァティー王国が繁栄しました。この王国では、モン文字が開発され、東南アジアにおける先住の文明民族としての地位を確立しました。

ハリプンチャイ王国

661年または750年頃、現在のタイ王国・ランプーンにハリプンチャイ王国（661年 - 1281年）を築きましたが、伝説によるとコレラの流行により都を捨て南下したとされています。

タトン王国

南下したモン族は、タトンにタトン王国（9世紀 - 1057年）を建てました。

ペグー王朝とその後

1287年、ペグーにペグー王朝（1287年 - 1539年）を建設し、17世紀には再興ペグー王朝（1740年 - 1757年）を築きました。しかし、1000年頃から雲南からのビルマ人やタイ人の流入により徐々に力を失い、1757年に再興ペグー王朝は倒れました。

現在の居住地

その後、モン族の多くは南下を続け、現在はタイとミャンマーの国境地域に居住しています。

ミャンマーにおける状況

ミャンマーでは、植民地時代にコンバウン朝に反抗するためイギリスを支援しました。第二次世界大戦後、イギリスがミャンマー周辺地域から手を引くと、モン族は独自の王国を復古させようとする動きを見せました。しかし、ミャンマー軍事政権はこれを認めず、モン族はミャンマー連邦の構成民族の一つとして扱われています。

モン族は、カレン族など他の民族と連携して独立闘争を行いましたが、現在は沈静化しています。この間もタイ国境地域への南下が続き、特にミャンマー国内が内乱状態に陥った際には、多くの難民がタイ側に脱出しました。そのため、国境を挟んで親戚関係にある例が多く見られます。

タイにおける状況

タイでは、上座部仏教を信仰する平地民族であることから同化が進んでおり、ほとんどのモン族がタイ社会に溶け込んでいます。タイ政府は、ミャンマー難民であるモン族に対して比較的寛容な態度を示しています。冷戦期には、東南アジアにおける西側諸国として、難民を受け入れ、その情報を活用してタイ辺境地域の防衛に当たらせたと言われています。

建国記念日

1947年には伝説に基づいてモン族の建国記念日が作られ、モン太陰暦の11月の満月の日が祝われます。ただし、タイ王国・サムットプラーカーン県のプラプラデーンのモン族の間では祝われていません。

言語

モン語は、オーストロアジア語族モン・クメール語派に属し、独自のモン文字を使用します。このモン文字は、ブラーフミー文字系で、クメール文字と並んで東南アジアの文字形成に大きな役割を果たしました。ビルマ文字やラーンナー文字などの起源ともなっています。

まとめ

モン族は、東南アジアの歴史の中で重要な役割を果たしてきた民族です。独自の文化と歴史を持ち、今もなお、そのアイデンティティを保持しながら生活しています。彼らの歴史と文化は、東南アジアの多様性を理解する上で不可欠な要素です。

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