ユライ・ヴァルチュハ

ユライ・ヴァルチュハ（Juraj Valčuha、1976年 - ）は、スロバキアのブラチスラヴァで生まれた指揮者です。幼い頃から民俗音楽家の父親の影響を受け、ツィンバロムや作曲、指揮といった音楽の基礎を地元の音楽院で学びました。

1995年からは音楽の都、サンクトペテルブルク音楽院へ2年間留学し、名指揮者イリヤ・ムーシンに師事しました。さらに1998年から2002年までパリ音楽院でフュルスト・ヤーノシュに師事し、研鑽を積みました。この間、ヨルマ・パヌラのマスタークラスにも参加し、フランス・ユース管弦楽団ではエマニュエル・クリヴィヌのアシスタントを務めるなど、実践的な経験も豊富に積みました。

2003年にフランス国立管弦楽団でデビューを飾ったヴァルチュハは、その後しばらくフランス国内のオーケストラや歌劇場で活動しました。2005年頃からは活動の場を広げ、ドイツやイタリア、さらに2007年シーズンからは北欧やイギリス、アメリカなど、ヨーロッパ内外の主要なオーケストラや歌劇場に客演するようになりました。2009年から2016年までRAI国立交響楽団の首席指揮者を務め、その手腕を高く評価されました。

2011年10月には、ベルナルト・ハイティンクの急病による代役として、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会に登場。この緊急登板で見事な指揮を披露し、その名を世界に知らしめました。2022年からはヒューストン交響楽団の音楽監督に就任し、オーケストラの新たな時代を切り開いています。さらに2024年4月からは読売日本交響楽団の首席客演指揮者にも就任し、日本での活動も本格化させています。

ヴァルチュハはこれまでに、フィルハーモニア管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ピッツバーグ交響楽団、ゲヴァントハウス管弦楽団、ロサンゼルス・フィルハーモニック、シュターツカペレ・ドレスデンといった世界的なオーケストラに客演しています。また、歌劇場でもその活躍は目覚ましく、リヨン国立オペラ、バイエルン国立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、フェニーチェ劇場などで、『青ひげ公の城』、『ラ・ボエーム』、『蝶々夫人』、『フィガロの結婚』など、数多くのオペラを指揮しています。

録音活動にも積極的で、キャリアの初期にはフランス国立管弦楽団とドメニコ・アラレオーナの『ミッラ』を録音しています。また、ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団とのコンサートの模様は映像化もされています。

ヴァルチュハは、その音楽に対する深い理解と情熱、そして卓越した指揮技術によって、世界中の聴衆を魅了し続けています。今後の更なる活躍が期待される、現代を代表する指揮者の一人です。

もう一度検索