ヨハン・グリューバー

ヨハン・グリューバーの生涯と業績

ヨハン・グリューバー（1621年/1623年10月28日 - 1680年9月30日）はオーストリア出身のイエズス会士であり、イエズス会士のアルベール・ドルヴィーユと共に、初めてラサに到達したヨーロッパ人として名高い。日本語の表記ではグリューベルとも呼ばれ、高い数学の知識と独自の視点から異文化に迫ったことから、彼の業績は多方面で評価されている。

初期の生涯

グリューバーは1621年または1623年にオーストリアのリンツで生まれた。成長するにあたり、彼はイエズス会の神学校で学び、主に数学においてその才能を発揮した。1656年、彼は中国への伝道の旅を開始し、ヴェネツィアを出発、アナトリア半島のスミルナ（現イズミル）に寄港した。その後、彼はスミルナで知り合ったディステルと共に陸路を使い、ホルムズまで辿り着く。

中国とチベットへの道のり

ホルムズから再び船によって移動し、インドのスーラトを経て、1658年7月にはマカオに到着。そこで彼は清の宮廷を訪れ、数学者アダム・シャールと交流し、彼のもとで学ぶこととなった。しかし、順治帝の死後、イエズス会内でのシャールに対する疑念が高まり、グリューバーは彼と対立する立場を取り、ローマに告訴状を提出する役目を担った。この紛争が続く中、彼はドルヴィーユと共に陸路でインドに向かうことを決める。

1661年の4月13日、北京を離れた彼らは、5月に西安、6月末には西寧を訪問。西寧で2週間過ごした後、青海湖やツァイダム盆地を通過し、10月8日にダライ・ラマ5世の治世下であったラサに到着する。彼はチベットでの滞在中、現地の記録を残したが、敬虔なキリスト教徒であった彼の視点は、当時の宗教的慣習に偏見を持つものとなった。チベット仏教とカトリックの類似を指摘しつつ、ダライ・ラマ5世を「死刑を下す悪魔のような人物」と述べている。

チャレンジと帰還

約2か月の間、ラサに滞在した後、グリューバーたちは11月末にラサを離れ、シガツェを経由してネパールのカトマンズに訪れる。ここで彼らは当地の王からの歓迎を受け、布教活動も行う。しかし、ドルヴィーユの死に直面し、グリューバーはサンスクリット学者ハインリッヒ・ロートと共に陸路をインド経由でスミルナに戻ることになった。1664年2月にはローマに帰国したものの、オーストリアに戻った後の動向は不明瞭である。

文献と影響

1667年、彼の手記とスケッチはアタナシウス・キルヒャーの手によって『中国実体験記』として出版され、これによりヨーロッパに初めてダライ・ラマやポタラ宮の情報が伝わることとなった。ただし、グリューバーはその内容に対し不満を抱き、再度の訂正を試みるも終生の課題となった。彼は1680年にハンガリーのシャーロシュパタクで死去するまで、様々な地域での経験を元に文化交流の重要性を訴え続けた。

結論

ヨハン・グリューバーは、イエズス会の一員として異文化理解の促進に寄与した人物であり、その伝道活動と探求心は、後の探検家たちにも影響を与えた。彼の業績はマルチカルチャーな理解と研究の礎を築くこととなった。

もう一度検索