ライト R-3350

ライト R-3350 サイクロン 18：B-29を支えた大出力エンジン

ライト R-3350 サイクロン 18は、アメリカのカーチス・ライト社によって開発・製造された航空機用空冷星型エンジンです。「デュプレックスサイクロン」とも呼ばれ、B-29戦略爆撃機に搭載され、第二次世界大戦において対日戦で非常に大きな役割を果たしました。

当時のレシプロエンジンとしては最大規模の出力を誇りましたが、開発は難航しました。開発自体は開戦以前から開始されましたが、B-29に採用されるまでには長い時間を要しました。戦後、民間旅客機向けにターボコンパウンド仕様のエンジンが製造されましたが、信頼性に欠け、不評を買いました。

開発経緯

ライト兄弟が創設したライト・エアロノーティカル社は、1930年代の航空機に広く用いられたサイクロンエンジンを開発しました。1929年、ライト社はカーチス・エアロプレイン＆モーターなどと合併しカーチス・ライトとなりましたが、発動機部門は存続し、1,000馬力クラスのエンジンの開発が続けられました。1931年に完成したR-1820 サイクロン 9は、1930年代から第二次世界大戦初期にかけて軍用機に広く使用されました。

同時期、プラット・アンド・ホイットニー（P&W）はワスプ・エンジンのシリーズを開発しました。この二重星型ワスプ・エンジンは、サイクロンよりもコンパクトで高性能でした。1935年、カーチス・ライトはP&Wに対抗するため、サイクロン 9をベースにした新エンジンの開発を開始し、複列14気筒のR-2600と複列18気筒のR-3350が開発されました。

1937年5月に最初のR-3350の試運転が行われましたが、エンジンの運転状態が安定せず、14気筒のR-2600の方が注目を集めたため、開発は難航しました。1941年になってようやく、アリソン製のV-3420 エンジンにかえてXB-19に採用され、R-3350は初めて空中に上がりました。

実戦での運用

1940年、アメリカ軍は、2,000lbの爆弾を積んでアメリカ本土からドイツを攻撃する長距離爆撃機の開発を計画しました。これには大馬力のエンジンが必要となり、R-3350の開発が重要となりました。1943年までにB-29の機体は完成しましたが、空気抵抗削減のためエンジンカウルを絞った設計にしたため、エンジンがオーバーヒートしやすくなりました。また、軽量化のために多用されたマグネシウム合金製の部品が発火しやすいという問題もありました。そのため、エンジン火災を起こす機体が多く、軍はその対策に苦慮しました。

R-3350の初期型はキャブレター式で混合気の供給に問題を抱えていましたが、1944年後半には燃料噴射方式に変更され、信頼性が改善されました。

戦後

戦後は、民間機市場への供給のため燃費の向上が図られ、ターボコンパウンド方式が開発されました。これは、エンジン1基につき3個のタービンにより排気エネルギーを回転エネルギーに変換し、クランクシャフトに伝えることで排気中の熱エネルギーの20%を回収するというものでした。この改良を加えられたR-3350は、ロッキード コンステレーションやダグラス DC-7などの大型旅客機に採用されました。しかし、ターボコンパウンド仕様のR-3350は構造が複雑でトラブルが頻発し、ターボプロップ方式の実用化・普及に伴い、第一線から退きました。

主要諸元

(ここに主要諸元の表を挿入)

派生型

(ここに派生型の情報を挿入)

主な搭載機

B-29 スーパーフォートレス
B-32 ドミネーター
マーティン JRM
C-97 ストラトフレイター
A-1 スカイレイダー
P-2 ネプチューン

トリビア

ソビエト連邦において、B-29がリバースエンジニアリングによりツポレフ Tu-4として生産された際に搭載されていたエンジンはR-3350ではなく、R-1820をライセンス供与して生産されたシュベツォフ M-25が独自改良されたシュベツォフ ASh-73でした。

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