ラヂミチ族

ラヂミチ族：歴史と起源

ラヂミチ族は、9世紀から12世紀にかけて年代記に言及される、東スラヴ人の部族または部族連合です。彼らは現在のベラルーシ、ホメリ州やマヒリョウ州に位置する、ドニエプル川の上流域からソジ川流域にかけて居住していました。

起源

『原初年代記』によれば、ラヂミチ族はリャフ人（ポーランド人）に起源を持ち、ルーシの地に定住し、キエフ大公国に貢税を納めていたとされます。伝説的ながらも、ポーランド由来の部族という見方が一般的ですが、その起源については未だ定説が確立されていません。

歴史

年代記には、ラヂミチ族の名前は、その祖先であるラヂムという人物に由来すると記されています。ラヂムはラヂミチ族の長であり、原ポーランドから来たとされています。年代記にはラヂミチ族の公（クニャージ）の名前は記されていませんが、彼ら独自の軍隊が存在したことを示す記述があり、自前の指導者を有していたと考えられます。

885年、キエフ公オレグが勢力を拡大し、ラヂミチ族はそれまでハザールに支払っていた税を停止し、新たにキエフに貢税を納めることになりました。907年には、ラヂミチ族はオレグの軍に加わり、コンスタンティノープルへの遠征に参加しました。このように、ラヂミチ族は一時的にキエフの支配下にありましたが、後に決別しました。

984年、キエフ大公ウラジーミル1世の軍司令官ヴォルチー・フヴォストの軍勢がラヂミチ族の地に侵攻しました。ソジ川支流のペシチャニ川（現在のスラウハラド付近）で両軍は衝突し、ラヂミチ族は敗北しました。その結果、ラヂミチ族の地はキエフ大公国の領土に組み込まれ、後にチェルニゴフ公国やスモレンスク公国の領土となりました。

ラヂミチ族に関する最後の言及は1169年の記述です。ラヂミチ族の居住範囲には、クレチュト（現在のクルィチャウ、1136年）、プラポシャスク（現在のスラウハラド、1136年）、ゴミー（現在のホメリ、1142年）、ロガチョフ（現在のラハチョウ、1142年）、チェチェルスク（現在のチャチェルスク、1159年）といった都市が存在していました。

現在のベラルーシ人の祖先は、ラヂミチ族、クリヴィチ族、ドレゴヴィチ族といった周辺の部族が融合して形成されたとする説が有力です。

参考文献

ブロックハウス・エフロン百科事典
ソビエト大百科事典
和田春樹編 『ロシア史』山川出版社、2002年
伊東孝之・井内敏夫・中井和夫編『ポーランド・ウクライナ・バルト史』 、山川出版社、1998年
服部倫卓 『歴史の狭間のベラルーシ』 東洋書店、2004年
田中陽兒・倉持俊一・和田春樹編『世界歴史大系　ロシア史 1 -9世紀～17世紀-』山川出版社、1995年

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